第2節 文書とは
- 「文書」ということばには、狭・中・広の3義がある。
- 狭義での「文書」とは、日本の官庁や会社で使っている概念であって、「業務用の手紙」である。
- で、この場合、その他の書いた物は、一括、「資料」と呼び、さらに、その資料に固い表紙がついていると、「図書」と呼ぶ。
- あまり、よいことばの使い方ではない。
- つぎに、中義での「文書」とは、文字、図、表を書いてある物の一切、つまり、「書類」を言う。
- ラテン語の動詞 doceo は「教える」「示す」「証明する」であるが、その名詞 documentum は「教訓」「警告」「実例」「証明」であって、それが英語になった
document は、「書類」「証書」「証券」などを意味する。
- つまり、中義の「文書」は、これである。
- つぎに、広義の「文書」は、1960年ごろから、日本でも、ひとつの流行として使われている形のものである。
- 情報科学でのことばで、「情報」を、保存の効かない情報(例 人の声、のろし、信号音、音楽、手旗信号、光信号、じゃんけんぽん)として「流動情報」 influencial
information、保存の効く情報(例 文字に書いた物、絵画、写真画、パンチ・テープ、パンチ・カード、録音テープ、レコード)として「定着情報」
fixed information に分け、この「定着情報」を、別名、文書 documnent
と呼んでいる。
- なるほど、流動情報を売る、たとえば「タレ込み屋」は、役務(えきむ)サービス業の1つであるが、定着情報を売る、たとえば、書店、画商、レコード屋、コンピュータのプログラム・テープ屋は、商業に分類される。
商業は、必ず「商品を売る」から、ここでの、そういう商品を一括、「文書」と呼ぼうとするものである。
- ともあれ、諸君は、「文書」ということばを聞かれたとき、この狭義、中義、広義のいずれなのかを判断される必要がある。
- で、この冊子でいう「文書」とは、この中義のものである。
- この冊子では、マルで終わる一連の文字のつながりを「文」、文のつながりを「文章」、文章を持ちはこびのできる有形物にまとめたものを「文書」と呼んでいる。
- なお、この冊子では、図表と呼ぶとき、図解、地図、統計グラフ、統計表、チェック・リスト、一覧表、分類表、注解箇条書きなどを含んでいる。