第1章 論文の書き方◆第15節 宛名
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第15節 宛名


  1. ※ 宛名は、第1ページ、第1行に、次図の要領で、記入されよ。(△5)

    宛名の書き方

  2. 観光産業マンが、宛名を誤記されることは、致命傷と知られよ。

  3. ときどき、学生諸君の中には、わたくしの名前を、「村」「材」と書かれる方がある。

  4. 観光産業マンが、客の名前を、つぎのように書けば、書かれた本人は、どう思うであろうか。

    健至
    阿久津
    青砥
    訓世
    斎藤
      健児、建次
      愛久津
      青戸
      邦代
      斉藤

  5. たとえ、本文を行書体、草書体で書くような文書でも、宛名は、楷書で書かなければならない。

  6. また、相手が、その名前を、みずから略して書いていないときは、こちらも、宛名として、その名前を、略字で書いてはならない。

  7. 宛名には、相手の氏名だけのときと、肩書も付けるときとがある。

    (例) …… 氏だけ
      林 實 …… 名だけ
      林 講師 …… 氏と肩書
      講師 林 實 …… 肩書と氏名

  8. 宛名の氏と名とのあいだをあけるか、あけないかは、その氏名全体の字数による。
    その要領は、あとで、発信者氏名のところで述べよう。

  9. 氏名と肩書のあいだは、氏名と肩書いずれが先になろうが、1字分、あけられよ。

    (例) 社長 彦田征寛
      金沢 マーケティング部長 

  10. 宛名と殿との間も、1字分、あけられよ。 

  11. 「殿」を楷書で書くとき、そのつくり(文字の右半分)の形に注意されよ。(△2)

    殿の書き方

  12. 現代人としては、この殿の書き方など、どうでもよいと思いがちである。
    これをとやかく言うのは、文字の先生ぐらいであると思いやすい。
    ところが、あなたが一流企業体の社員となったとき、たちまち、ここまできっぱりとやられるのである。

  13. 「様」を用いたとき、「様」のツクリの下のほうを、略字でよいから、あいまいでなく、書かれよ。

  14. むかしは、よく、様という字を、次のように区別して使っていたものである。
    現在でも、ほんとうにキチッとしたところでは、区別している。

    えいさま (えいさま) 自分より、はるかに目上に使う
    つぎさま (つぎさま) 自分と同じか、少し目上に使う
    みずさま (みずさま) 自分より目下に使う。
    いまではこの様(みずさま)が一般的であるから、だれに使ってもよい。
    字形は、少し違う。(36節参照)*


  15. では、どういうときに、「殿」を用い、どういうとき、「様」を用いるか。

  16. まず、宛名に、「殿」をつけるのは、① 相手の氏名に肩書きを付けるとき

    (例) 株式会社藤沢製作所
    社長 藤沢和隆 殿
        東京プレジデントホテル
    壱岐村 マネジャー 殿
           
      国土庁企画調整局
    井上 参事官 殿
      内閣総理大臣
    石橋良治 殿

  17. このときは、相手が、自分より、どれほど、「えらい」人であろうが、「殿」をつけるし、自分の部下であろうが、同じにする。

  18. 相手に肩書をつけないが、「殿」で書くのは、 ② 当方が相手の監督者であることを、公的に示す意思を持ったときだけ。

  19. 「おや、うちの娘に、男の人から手紙が。でも、上役さんか、先生か、伯父さんか、お兄さんか、からかも知れないね。殿宛になっているものね」

  20. 「お前、あまり会社を休んでいるから、見ろ。手紙が来たぞ。差出人は、これは、課長かい。殿宛になってるぞ。公式の詰問状だぞ、きっと」

  21. 以上 ①  のケースを除いては、すべて、「様」とされよ。

  22. わたくしのところに、1年間、「殿」宛で、論文を提出しつづけられた学生諸君が、卒業され、わたくしに、肩書なしの宛名で、手紙を下さるとき、よく、「殿」宛で下さることがある。
    こうされることによって、その卒業生は、にわかに、わたくしに監督される立場に立たれたような表現を採られていることになる。

  23. 自分の子供、弟、妹に対しても、私信は、「様」とされよ。

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