第7章 飲食・喫煙
◆第3節 パーティー外での立食作法
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第3節 パーティー外での立食作法
【通解】
- 本来、東洋では、よほど、不作法者でなければ、立ったままの飲食をしないできた。
- が、欧米には、座っての飲食についで、立ったままの飲食が、大昔から、普通の行為として行われてきた。
- で、欧米には座食作法についで、立食作法があり、東洋には、立食作法など、ない。
- で、問題は、東洋人が立食させられるとき、「ただ、崩せばよいのであろう」、とばかり崩すと、欧米人から、「立食作法すら知らない、いわんや、座食作法など、到底知るはずのない野蛮人」と見なされることである。
- で、東洋人は、バカバカしいが、立食作法を身に付けておかなければならない。
【型1】持っていって、座って飲食せよ
立食飲食品を購入したとき、それは、オート・ベンダーから購入したときも同じであるが、
できるだけ、座るところまで持っていって、座ってから、飲食されよ。
【説明】
- ヨーロッパでは、もとより、アメリカでも、たとえば、空港待合室にいたものとして、そこの片すみのスタンドで、コーヒーを1杯、購入したものとする。で、現地人は、どうするかというと、そのコーヒーを、ソーサーごと自分で運んで、50mや100mぐらい離れているイスのところまで持っていって、座って、飲みはじめる。
- ところで、ミルクを入れるのを忘れていたとする。すると、またそのコーヒーをソーサーごと持って、もとのスタンドに行って、ミルクを入れる。で、また、イスのほうに持って来て、座ってから飲む。
- で、飲み終わると、また、カラになったコップなどを、スタンドのところまで、返しに行く。
- 日本人であると、スタンドのところで、立って、飲んでしまう。または、イスのところまで持って来たとして、空コップを返しに行かず、イスのところの卓上に、置き去りにする。
【型2】飲みかけのあと始末
ウェーターのいないところでの飲みかけコップは、まず、飲みのこしを、然るべきところに空け、それから、空コップを、持って行くべきところに持って行かれよ。
【説明】
- よく、日本人は、飲みかけのあと始末について、つぎのいずれかを行なう。
- そのまま、放置して、いなくなる。……あと、誰が掃除するのか……。
- 飲みのこしを、草にかけて、空コップを返すなり、紙コップならば、捨てるなりする。…草が枯れる……。
- 飲みのこしを入れたまま、返しに行くなり、紙コップならば、屑箱にほうり込む。
- 飲みのこしを、草にかけないこと。屋内では、洗面台まで空けに行くこと。そこまで、やらなければ、いけないのか。そこまで、やらなければいけないのである。
- 飲みのこしを、返しに行くことを、失礼とする習慣がある。
- 飲みのこしを、紙屑箱に捨てれば、箱の中が、どうなるか。
- しばしば、集団の休憩時間に、この飲みのこし問題を起こしやすい。そこで、つぎの集合時刻の5分前が来たとき、飲みのこしのあと始末作業に入らなければならないとしたもの。
【型3】空コップなどのあと始末
空コップは、紙コップに至るまで、自分の手であと始末されよ。
【説明】
- 日本人は、ウェーターのいない場所でも、ガラスのコップを空にしたとき、そのまま、置いていきやすい。これは、どこかまで、返しに行かなければならない。
- 日本人は、紙コップを空にしたとき、そこに、置き去りにしやすい。これも、どこかまで、返しに行くか、それとも、紙屑箱に捨てるかしなければならない。
【参考】
コップを使い捨てにするほうが、ソーシャル・コストが安くつくという考え方は、1960年代において、自由世界を支配した。が、1970年代以降、世界資源の見地から、徐々にこの考え方も否定されはじめている。
かつては、一国の資源事情から、日本を含む資源不足の国で、そう考え、ついで、世界分業の見地から、これが、否定され、再度、世界資源の見地から、見なおされはじめている。紙コップひとつにしても、専用の捨て箱を置き、資源回収を考える必要を生じてこよう。
【型4】人前でラッパ呑みするな
- 座席のないところで、飲むときにも、つとめて、コップにあけて飲まれよ。
- しかし、紙コップもないことがある。そのときは、人のうしろに行き、人々と反対の方向を向いて、ビン、缶から直接に飲まれよ。
【説明】
- 見ていると、欧米人は、野外でも、ビン、缶の飲み物を、ガラスか紙のコップにあけて、飲むことを励行している。ビンや缶を口にあてて飲むのは、コップのないときだけである。日本人は、これを知らないから、どこででも、ラッパ呑みして、軽べつされる。
- なぜ、ラッパ呑みが不作法なのかを聞いてみたところ、「1つには、不潔じゃないか」という、これはわかる。「もうひとつには、男女とも、唇は、女性器に似ていて、そこに、棒状のものをあてがうと、性交に似る」という。これは、そう連想する者の品性が、よくない。が、なるほど、日本でも、ビンの口から、じかに呑むのは、不作法とされている。ただ、日本では、ビンの口を1人の独占物にしないための作法としている。
- ラッパ呑みするとき、日本人は、オート・ベンダーで出したビン、缶を、そこで、すぐラッパ呑みする。欧米人は、それを、何mか離れたところに持っていってから、みんなに、背を向けて、ラッパ呑みする。このことを、海外に出かけたとき、観察されよ。
- うしろを向いて飲むなど、陰険であると思うのであるが、これを、丁寧であると思わなければならない。くだらないと思わぬこと。
- コップに入っている飲み物を、人々のほうに向いて飲むことは、いっこうに不作法でない。みんなで、円陣をつくって、立話しているとき、コップに入れた飲み物を飲むのに、うしろ向きになるなどは、やりすぎである。(このとき、ラッパ呑みのためには、やはり、うしろ向きにならなければならない)
【型5】飲みながら歩くな
- コップからであろうと、ラッパ呑みであろうと、飲むときは、必ず、両足とも停止していなければならない。
- 飲みかけのコップやビンを持って移動することを、少しも、不作法と考えない欧米習慣である。
【説明】
これらも、立食を不作法としない社会にして、はじめて、必要な作法なのであろう。
【型6】売ってくれた人の前で、すぐに、飲むな
- ビン、缶、コップのまま、売ってもらったとき、こちらが立っていたならば、その売っ
た人の鼻先での「ただちに、ひと口」は、いけない。1歩、横に寄ってならばよい。
- さらに、どこかに持っていってからならば、いっそう、よい。
- オート・ベンダーの前でも同じとされている。
【説明】
- これは、もともと、牧場で、行列して、ミルクを貰うときの作法であったらしい。そうでなくとも、ヨーロッパには、つねに、飢饉があった。と、そのとき、領主が庫をあけて、穀物を配給した。しかし、ただ、配給すると、それを、かきあつめて、商売する者を生ずる。で、お粥にして配った。で、そのとき、人々は行列して、給食を受けた。また、軍隊学校での行列して食事を貰う形は、日本より1千年は古い。こういったことから、行列して、飲食物を貰った者が、1歩、横に出て、飲食するという作法を生じた。そのわけは、簡単で、その場で飲食されると、つぎの番の者に配るのが、遅くなるからである。
- ついで、行列をつくってなくても、買った飲食物を、売った人の鼻先で、すぐに立食することを、不作法と見る習慣を生じている。これは、なぜであるかわからない。おそらくは、行列しての前例からの延長感覚によるものでないか。それとも、「子供みたい」ということであろうか。
立ったまま、飲食することが。不作法である東洋の習慣から見れば、買ったとき、その場で食べようと、不作法つづきで、どういうこともないはずであるが、立食を不作法と見ない社会では、その場で、飲食することだけを不作法と見る。
このことは、欧米人と、日本の座敷で、酒盛りをしていて、よく、彼らが、寝っころがる問題にあたると見たい。つまり、彼らは、床の上に、あぐらをかいて、飲食することと、寝っころがって飲食することを、同じく、不作法の中と見ているのであって、日本に来て、床の上に座っての飲食が不作法と思われないならば、寝っころがっても、不作法であるまいと思っている。ところが、日本では、座っているのと、寝っころがっているのとの間に不作法と、そうでない境があるわけである。
- では、欧米で、バーでの立食のとき、客が、与えられた飲食物を、その場で飲食しても、不作法にならないのは、どう考えればよいかということになる。
が、バーでも、客が、行列をつくっていたとすれば、1歩、横に寄るか、ほかのところに持って行くかしないかぎり、飲食しては、不作法となる。
が、もし、バーで、客が行列をつくっていないならば、このバー (横木) は、それぞれの食卓と見なされ、バーテンダーは、ウェーターと見なされる。
で、客は、その場で、飲食すればよい。
第7章 飲食・喫煙