総論 ◆第9節 品物を大切にせよ
前節 次節

第9節 品物を大切にせよ


  1. 「消費は美徳なり」という言葉があった。が、そこで言っている「消費」は、「浪費」を意味していた。で、「消費は美徳なり」と言うわけである。つまり、そこで言っていることは、次のようなことであった。財貨が、激しく、使い潰されることによって、財貨需要が拡大し、したがって、生産が拡大する。
    で、生産が拡大すれば、所得水準が上昇する。よって、財貨の購買力も拡大する。経済発展疑いなし。経済発展の本源は、浪費にあり。
    1つの国の経済を、5年刻みぐらいで眺めるとき、ある5年間には、「消費は美徳なりという時代もある。が、長期間を通じて眺めると、「消費は美徳なり」ではおかしい。世界の資源量とのバランスを考えなければならない。人間一生の経済を考えるならば、やはり、「品物を大切にせよ」が正しい。品物は、神さまから頂いたものである。大切にしなければならない。
    こん日、科学技術の進歩によって、われわれは昔、持っていなかった多くの品物を持っている。また、昔ならば、考えられなかったような安価で高級な品物を手に入れている。
    科学技術は、人間の知恵によっている。
    しかし、この科学技術を進歩させた人間の知恵は、神さまの見えない手によって導かれてきているものである。
    品物を大切にしないことは、神さまの恩義に仇で報いていることである。

  2. 作法の中で、品物を大切に扱うという要素をまじめに考えたい。

  3. スマートに行動するため、品物を荒く扱うことは、作法から外れている。
    品物を大切に扱うため、動作がのろく、かつ、ぶざまになるほうが作法として高級なのである。

  4. 人は富を得るために、はなはだ苦労する。で、富を得たとき、しばしば、品物を粗末に扱って見せたくなる。たまたま、そのころ、にわかに行儀よくしようと考えるようになる。
    で、品物を粗末に扱うが、立居振舞や言葉使いだけが上品であるという1つの形態を表わしたりする。
    と、これを「成り上がり者」の作法と呼ぶ。
    現代日本人の作法には、大なり小なり、成り上がり者の作法の性格がある。諸君は、この段階から早く卒業されるように。

総論
[エージェントマンに作法は要るか] [作法とは] [作法の目的の分解] [作法は自分のためならず]
[「われわれ」の伸縮] [「より外なるわれわれ」のために] [互恵主義] [作法は森羅万象のためのもの]
[品物を大切にせよ] [与えられた文明には心が乗りにくい] [ゴツイ人物のやり方]
[自分自身がどうしてよいか分らないとき] [どうしようか迷っている相手に対しては]
[作法的なつもりで無作法を行なう者をどうするか] [改まり方・くずし方] [作法とサービス]
[作法と生産性] [心と型] [動機論か結果論か] [媚と反媚] [作法と自然さ] [作法の流儀]
[統一型作法と並列型作法] [欧米との流儀の融和] [アメリカ作法を見誤るな] [一般と特殊]
[3種類の動作] [作法と体型] [作法と風習] [作法と大衆] [作法と女性] [異なるセックス意識]
[作法とヤング] [雑音を嫌う] [あとしまつの技術] [縮小化のわきまえ]
[そこまでやるのか。そこまでやるのである] [作法のために頭が痛くなれ] [教授法での注意]
[説明するな] [作法研修先での注意] [この本での対象作法の限定] [この本の編序] [用語の約束]
ホーム
前節 先頭行 次節