総論 ◆第30節 作法と大衆
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第30節 作法と大衆


  1. 現代が大衆時代であることは、申すまでもない。が、大衆が、粗野である時代は終わりかけている。豊かな大衆は、ノーブルなものを求めてゆく。

  2. ノーブルなものは、窮屈であるから、大衆から好まれないと信じられてきた。が、ノーブルなものを眺めているぶんには、窮屈でなく、ノーブルを演出する者にとってのみ、窮屈である。

  3. ノーブルな趣味は、貴族的なものであるから、人間性から離れたものであると信じられてきた。ところが、人間の巧みが進んでゆくと、どうしても、貴族的なものになってしまう。それでは、貴族的なものの、どこがいけないか。それは、ノーブルなものを、貴族が独占したことに、いけなさがあった。

  4. ノーブルなものを虚栄心の対象のように思い込む者は、幼稚な錯覚に陥っていると見る。

  5. わたくしは、以上の考えから、貴族らしさを表わす作法の存在とともに、庶民らしさを表わす作法の存在を否定する。そうして、しかも、ノーブルであることを、求める。

  6. 次に、大人(たいじん)は、なにもなさず、小人が、その身辺の世話万端をするというのが、東洋での伝統的習慣である。そこで、大人たる者は、こせこせ、手を動かさないのが、作法ということになる。
    しかし、いま、世界人としての作法を考えるならば、これでは、いけない。
    自分より、身分の低い人に対しても、平等に世話されよ。

総論
[エージェントマンに作法は要るか] [作法とは] [作法の目的の分解] [作法は自分のためならず]
[「われわれ」の伸縮] [「より外なるわれわれ」のために] [互恵主義] [作法は森羅万象のためのもの]
[品物を大切にせよ] [与えられた文明には心が乗りにくい] [ゴツイ人物のやり方]
[自分自身がどうしてよいか分らないとき] [どうしようか迷っている相手に対しては]
[作法的なつもりで無作法を行なう者をどうするか] [改まり方・くずし方] [作法とサービス]
[作法と生産性] [心と型] [動機論か結果論か] [媚と反媚] [作法と自然さ] [作法の流儀]
[統一型作法と並列型作法] [欧米との流儀の融和] [アメリカ作法を見誤るな] [一般と特殊]
[3種類の動作] [作法と体型] [作法と風習] [作法と大衆] [作法と女性] [異なるセックス意識]
[作法とヤング] [雑音を嫌う] [あとしまつの技術] [縮小化のわきまえ]
[そこまでやるのか。そこまでやるのである] [作法のために頭が痛くなれ] [教授法での注意]
[説明するな] [作法研修先での注意] [この本での対象作法の限定] [この本の編序] [用語の約束]
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