総論 ◆第35節 あとしまつの技術
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第35節 あとしまつの技術


  1. 1つ、前むきに仕事をしたとき、いくつかのあと始末が要る。そのあと始末のできないうちに、前むきに、突進すると、空中分解する。
    つまり、前むきに、どんどん仕事をする人物というものは、その何倍の速さで、あと始末をしてゆくことのできる人物である。
    作法とは、はなはだ多く、あと始末の技術である。

  2. たとえば、自分の脱いだ履物のあと始末をするとか、脱いだ上着、コートのあと始末をするとかいうことは、その小さな例といえる。
    人から世話になったとき、礼の電話をかけるとか、礼状を出すとかということは、やや大きなあと始末である。

  3. ところで、われわれは、失敗したときのあと始末に気が進まない。その失敗を忘れてしまいたい。
    が、失敗でのあと始末をあいまいにする者は、作法をわきまえた者として扱われないし、信用されない。

  4. さて、失敗のあと始末は、オーバーに行なえば、いや味となる。
    作法者が、あきらかに失敗したときには、ちよっと慎みをあらわし、あと、なにごともなかったようにされよ。

  5. ことばでも、言い違えたとき、「失礼致しました」のあやまりことばは、電話とかラジオ放送のように、こちらの姿が、相手に見えないときのみ、用いられよ。姿が見えているときは、黙礼といった動作だけのほうがよい。

総論
[エージェントマンに作法は要るか] [作法とは] [作法の目的の分解] [作法は自分のためならず]
[「われわれ」の伸縮] [「より外なるわれわれ」のために] [互恵主義] [作法は森羅万象のためのもの]
[品物を大切にせよ] [与えられた文明には心が乗りにくい] [ゴツイ人物のやり方]
[自分自身がどうしてよいか分らないとき] [どうしようか迷っている相手に対しては]
[作法的なつもりで無作法を行なう者をどうするか] [改まり方・くずし方] [作法とサービス]
[作法と生産性] [心と型] [動機論か結果論か] [媚と反媚] [作法と自然さ] [作法の流儀]
[統一型作法と並列型作法] [欧米との流儀の融和] [アメリカ作法を見誤るな] [一般と特殊]
[3種類の動作] [作法と体型] [作法と風習] [作法と大衆] [作法と女性] [異なるセックス意識]
[作法とヤング] [雑音を嫌う] [あとしまつの技術] [縮小化のわきまえ]
[そこまでやるのか。そこまでやるのである] [作法のために頭が痛くなれ] [教授法での注意]
[説明するな] [作法研修先での注意] [この本での対象作法の限定] [この本の編序] [用語の約束]
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