林實先生の作成された「文書心得」の中の「論文の書き方」の規則に沿って、週に一度、論文を提出しました。
テーマが各週、決められていて、例えば「ビジネスホテル」「遊園地」「喫茶店」など。
「内容はどうでもいいんだ。文書の作り方の練習だ」とおっしゃって、原稿用紙のマスの罫線から線がはみ出したり、くっついていないのを、拡大鏡を使って見逃しませんでした。
私はこのときの訓練のおかげで、悪筆だったのが人にほめられるくらいな読みやすい字を書けるようになりました。その後、パソコンばかり使うようになり病気をしたせいもあり、へたに戻りました。
それまでは、日記風のダラダラした文書しか書いたことがなかったので、文字数など細かな規則に合った文書を作成するのはよい訓練でした。卒業してから何回か新聞の読者欄に投書できたのもこのときの訓練のおかげです。
減点対象に「俗語を使うな」というのがありました。
( )内は、俗語でない言い方。
※例 たいへん(すこぶる) すばらしい(みごとな、すぐれた) たくさん(多く)
まだ(いまになっても、他に) もう(すでに、もはや) わたし(わたくし) 等。
このことを書いてある本が少ないように思いますので、教わってよかったと思っています。
2Bの鉛筆を使うこと、文書の書式の知識、ホッチキスの留め方に至るまで、その後の私の人生に役立っています。
「内容はどうでもいいんだ」とおっしゃりながらも、きちんと読まれていて、一度私が一流ホテルの貴族趣味と思われるところについて書いたところ、授業中私の側に立たれ、皆に向かって「世の中には貴族的なものと庶民的なものとあるんだ。貴族的なものを否定するのはおやめなさい」と語気強くおっしゃっいました。私はそのとき私に対してのお言葉と身のすくむ思いで伺いました。
林先生はご自分でも全ての原稿を2Bの鉛筆で書かれ、シャープペンシルは使われず、削り立ての鉛筆を十数本並べて置いて書くというスタイルでした。そして、鉛筆を削るのは奥様の仕事でした。
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