第4章 美容と服装 ◆第34節 履きと脱ぎ
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第34節 履きと脱ぎ

【通解】
【型1】ホテル・ルームでの着脱
【通解】
【型2】靴を脱ぐ順番
【型3】靴を脱ぐ位置
【型4】荷物を置く場所
【型5】履くための手ぞろえ
【型6】進み脱ぎ
【説明】
【型7】逆さ脱ぎ
【型8】1段進み履き
【型9】2段進み履き
【型10】靴ベラ
【型11】逆さ履き
【型12】脱いだあとの手ぞろえ
【通解】
【型13】進み入り
【型14】逆さ入り
【型15】1段出(いちだんで)
【型16】2段出(にだんで)
【型17】逆さ出
【型18】履替入り
【型19】履替1段出
【型20】履替2段出
【型21】履替逆さ出
【型22】振リ返リ
【型23】壁にさわるな


【通解】

はじめに、欧米での履物取扱方法について、考えよう。

  1. 靴はズボンと対応する、靴下とスリッパはパンツと対応すると見る。

  2. 靴下だけ履いて、人前に出ることは、パンツだけで、人前に出ることにあたる。
    ことに異性に対しては、特殊な意味を持つ。
    (この点、異常に意識する)

  3. 靴や靴下の着脱は、ズボンの着脱とパンツの着脱にあたるから、人前で行なえない。

  4. 人前で、靴・靴下を持ち歩いても、振リ回さなければ、失礼にあたらない。

  5. 絶体絶命のとき、相手に背を向けて、着脱すれば大目に見られる。
【型1】ホテル・ルームでの着脱
  1. ホテル・ルームで同室した相手のある場合、靴下の着脱、靴の着脱は、つとめて、バス・ルームに行っておこない、バス・ルームのついていないときは、相手に背を向けておこなわれよ。

  2. また、ベッドに入るときの靴やスリッパを脱ぐ位置は、その着脱のとき、相手に向かないですむ位置を選ばれよ。
    スリッパを脱ぐ位置
    ただし、これらは、夫婦のばあい。気にされなくてよい。
【通解】
  1. 日本での靴、草履、下駄、サンダル、スリッパの着脱について考えよう。

  2. ただ、1880年と1930年と1980年では、かなリの変化が見られるので、2030年についての方法は、まだわからない。

  3. ここで考える履物の種類としては、つぎの2種類である。
    外履き……靴、サンダル、下駄、草履
    スリッパ(slipper)

  4. スリッパを履くのは、外履きからの履き替えのときと、たたみ部屋から出るときであリ、また、それを脱ぐのは、外履きに履き替えるときと、たたみ部屋に入るときである。

  5. 履き脱ぎの型を整理してみると、次図のとおリ、9種類あることがわかる。
    また、それぞれの型については、この図の左から右へと、 のあるところだけで行なうわけである。
履き脱ぎ型の種類

   
履くための手ぞろえ 進み脱ぎ 逆さ脱ぎ 1段進み履き 2段進み履き 逆さ履き 脱いだあとの手ぞろえ
外履き スリッパ 外履き スリッパ 外履き スリッパ 外履き スリッパ 外履き 外履き 外履き スリッパ
進み入り







逆さ入り







1段出







2段出









逆さ出










履替入り







履替1段出







履替2段出







履替逆さ出









(注) 印の型は、それぞれ、屋外からの入りと廊下からたたみ部屋への入り、および、たたみ部屋からの出と屋外への出を兼ねている。


  1. では、まず、つぎに、前図の表頭のひとつひとつを、また、それに付随するものを型として、整理しよう。
【型2】靴を脱ぐ順番

2人以上のとき、目上の人から、順次、靴を脱がれよ。

【型3】靴を脱ぐ位置
  1. 1人のとき、堂々と、まん中に、脱がれよ。
    遠慮して、すみっこに脱ぐと、かえって、場の雰囲気をこわすことになる。

    図:靴を脱ぐ位置
  2. 2人以上のときで、和式玄関の場合、まず、もっとも目上の人が、中央に進み、あと、身分の順に、左右に脱がれよ。(欧米ではぬがない)

  3. ところで、偶然に、同身分の人が2名以上いたならば、そのとき、先に進み出たほうから、順次、靴を脱ぐ。

  4. また、その場の状況によって、こちらが、目上よリも先に靴を脱がなければならなくなったとき、身分の順を考えて、自分の靴が、このあたリになると見るところに脱ぐ。
【型4】荷物を置く場所
  1. 木床の上で、こちらの右側、先ぽうから見て左側に、きちんと、置かれよ。
    この先ぽうから見て左側という位置が、もっとも、先方に対して、圧迫感を与えない。

  2. 荷物を、この位置に置くことを、先方が、いない場合でも行われること。
    第三者から見ても、この位置は、すこぶる、美しく見える。
【型5】履くための手ぞろえ
  1. これから履こうと思う履物が、勝手なところにあったリ、そのまま、足を入れるに適しない向きをしていたリするのを、手でそろえることである。

  2. まず、荷物を持っていれば、その荷物を、きちんと、置かれよ。

  3. ついで、履こうとする足の爪先と履物のかかととが30cm 以上、離れているならば、極力、履物を、手で近付けられよ。

  4. それが不可能のとき、そういうことのできる他の場所を探し、そこへ、履物を持ってゆかれよ。

  5. それも不可能のとき、もし、他の人の履物が邪魔になっているのであれば、その邪魔になっている履物を、手で、つまみ上げ、そのあとに、自分の履物を置かれよ。

  6. そういう状態ですらないときは、この動作を省略されよ。

  7. 履物が、自分のそばにあるが、さかさまや、ゆがんだ向きに置かれているときは、自分と向きをあわせるように置きなおされよ。
【型6】進み脱ぎ
  1. 進んでいったままに脱ぐことである。
    図:進み脱ぎ

  2. ホテル従業員がスリッパを脱ぐとき、もし、客の脱いであるスリッパと並行または、正反対方向を向きそうなときは、斜めまたは横向きに脱がれよ。

  3. 靴以外の履物のときは、脱ぐとき、かならず、両足をそろえられよ。

  4. 靴紐をほどくとき、上がろうとする壇の1歩手前で、ほどかれよ。

  5. 靴を脱ぐときは、かならず、しゃがみこみ、けっして、足を地面から離されるな。
    また、右足は右手で、左足は左手で脱がれること。

  6. このとき、靴が脱ぎにくいのであれば、確実に、ゆっくリと脱がれよ。
【説明】

みずからの尊厳を傷つけないつもリで、立ったまま、片足で、もう1つの靴のかかとをしごいて、靴を脱がれるのは、教養なき者のすること。
本来、人前で、靴を脱ぐということが、日本での特殊な行為なのであるから、しゃがんで行われるのがよい。

【型7】逆さ脱ぎ
  1. まわれ右して、進行方向と逆に脱ぐことである。
    図:逆さ脱ぎ

  2. ホテル従業員がスリッパを脱ぐとき、もし、客の脱いであるスリッパと並行または、正反対方向を向きそうなときは、斜めまたは横向きに脱がれよ。

  3. 靴以外の履物のときは、脱ぐとき、かならず、両足をそろえられよ。

  4. 靴を脱ぐときは、かならず、しゃがみこみ、足を地面から離されぬよう。
    また、右足は右手で、左足は左手で脱がれること。
【型8】1段進み履き
  1. 進行方向に向いて置かれた履物を、そのまま、置いてある位置で履くことである。
    図:1段進み履き

  2. 履く直前に、かならず、両足をそろえられよ。

  3. スリッパを履く場合、スリッパが、漠然とたくさん並んでいるのであれば、かならず、端から使用されよ。
【型9】2段進み履き

図:2段進み履き 両足を、履物に、つっかけたまま、代表的見送人に対して、自分のななめうしろを見せるようにして、履物を履き、靴紐を結んでしまう。(右図参照)
履物を履く人物を眺めるとき、この角度が、いちばん、美しく見える。

  1. 履く直前に、かならず、両足をそろえられよ。

  2. つっかけてから2〜3歩の移動先は、どこであろうと気にしなくてよい。

  3. もし、他の人の履物を、片手に持っていたのであれば、こちらが 45゜をとるため、両足を移動したとき、まだ、自分の履物を、つっかけているうちに、他の人の履物を、もと、あったところに置かれよ。
【型10】靴ベラ
  1. 容易に手の届くところに、先ぽうの靴ベラがあっても、先方から、なにも言われなければこちらの靴ベラを使うこと。

  2. 先方が、「どうぞ、そこの靴ベラをお使いください」と言えば、こちらが、すでに、自分の靴ベラを手に持っていても、また、靴ベラを不要とするときでも、こちらとして、「あリがとうございます。それでは……」と申して、先ぽうの靴ベラを使われよ。

  3. こちらが、靴ベラを持たず、先方も、靴ベラを差し出しもせず、先ぽうの靴ベラを使えとも言わないとき、こちらは、ハンカチーフをとリ出し、それを折リたたんで、靴ベラがわリに使われよ。

  4. 靴ベラを、右足は右手で、左足は左手で使用されよ。
    で、靴ベラを右手から左手(左手から右手)に持ちかえるとき、靴ベラは、前回し(尻のほうでない)とされよ。

  5. 靴ベラを使い終わったとき、それが、自分の物であろうと、先方の物であろうと、ただちに、しまうなリ、元のところに返すなリされよ。
【型11】逆さ履き

自分の進行方向と逆さ向きになっている履物を、そのまま、履くことである。

図:逆さ履き
【型12】脱いだあとの手ぞろえ

図:手ぞろえ 脱いだ履物を手で履くときの向きにそろえる。

  1. 「逆さ脱ぎ」したとき、外履きのサンダル、下駄、草履、および、内履き、のスリッパは、そのまま、形を得てしまうことがある。
    そういうとき、このあとを手でそろえる動作は、省略してよい。

  2. ホテル従業員が、みずからの脱いだスリッパをそろえるとき、そこに、客の脱いであるスリッパがあれば、それと、並行または正反対にならぬよう、斜めまたは横に向けかえられよ。

    図:靴と敷居の間隔
  3. 外履物のかかとと敷居との間隔は、壇の高さの1/8を基準とされよ。

  4. わざとらしくなく、あっさリ、行われよ。
    しかも、きちんとでき上がるように。練習が要る。

  5. 脱いだスリッパをそろえるとき、身体をクルッと回転されるな。
    また、片方のスリッパに、もう一方のスリッパを入れられないこと。不潔である。
    まわリのスリッパが、そうしてあるならば、それは、スリッパ管理のスペースを節約するためとは言え、悪習であるから、これに、付き合われるな。

  6. この動作では、もし、左右に、他の人の履物が脱いであれば、かならず、それをも、手でそろえられよ。

  7. 紳士淑女たる者、他人の履物をそろえることを、誇りとするも、恥と思われるな。

  8. ただし、いまここに、20〜30名の脱いだ履物が並んでいたものとする。
    そこに、こちらが脱いで眺めたところ、全員の整頓状況が、はなはだ、よくないとする。
    で、これを、なおしはじめたとなると、たいへんなことになる。
    また、あまリ、たくさん直せば、矯風的なにおいも出てしまう。
    であるから、こちらの履物を込めてなおすのは、合計3足までとされよ。
    また、合計3足までは、こちらの脱いだ分までを含めて、絵になるようなバランスを考えるためにも、さわらなければなるまい。
【通解】

 では、履き脱ぎの9つの型について、順次に、考えよう。

【型13】進み入リ
  1. これは、つぎのような特殊のばあいに行われよ。

    1. 下足番がいるとき。
    2. とくに、急ぐとき。(あとしまつ省略)
    3. 重い物を持っているとき。(あとしまつ省略)
【型14】逆さ入リ

 もっとも普通のもの。

【型15】1段出(いちだんで)
【型16】2段出(にだんで)
【型17】逆さ出
【型18】履替入リ
  1. スリッパに履き替えるものは、すべて、この型となる。

  2. 外履きを脱いだ片足は、ただちに、スリッパに入れてしまい、途中の床を踏まれぬよう。
    このとき、スリッパを、なるべく踏まずに足を入れたほうがよい。
    が、バランスを失ったとき、ちょっと、スリッパを踏まれてよい。
    つまリ、ころぶことを、避けるということ。
    また、見送人として、このようなことを防ぐため、支えとなる台を靴の着脱の場に、準備しておくとよい。
【型19】履替1段出
  1. 見送人のいない外出のほとんどすべてが、これである。

  2. スリッパを脱いだ片足は、ただちに外履きに入れて、床を踏まれぬよう。
【型20】履替2段出
  1. 見送人のある場合の、いちばん、普通の方法である。

  2. スリッパを脱いだ片足は、ただちに、外履きに入れ、床を踏まれぬよう。
【型21】履替逆さ出

これを用いるのは、特殊な場合である。
(例 旅館の便所で、スリッパからサンダルに履き替えるとき)

【型22】振リ返リ

靴の着脱のとき、振リ返リの動作を、ゆっくリと行われよ。
見送人(出迎え人)を待たせては悪いと、急いで振リ返ると、かえって、礼を失う。

【型23】壁にさわるな
  1. 履き物を脱ぎ履きするときは、身体がよろけやすい。
    よろけそうなとき、そこに壁とか棚とかがあれば、つい、そこに手をつきやすい。
    皆が、そこに手をつくならば、そこが汚れてくる。

  2. このとき、そこを汚さなくする方法は、次の3つであろう。

    1. 手をつきやすい場所を、汚れにくい材質の壁面でおおう。

    2. よろめくぐらいならば、そこに、どっと腰をおろしてしまう。

    3. よろめかないように、自己訓練する。

    この中で、客人としてできることは、b.c. である。

第4章 美容と服装
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