第6章 和式作法 ◆第4節 座敷作法
前節 次節

第4節 座敷作法


【型1】座敷の順序

座敷には床(とこ)がある。
床は、中央に床、両脇に脇床(わきとこ)があるものが正式である。
床は、昔、仏画を飾った場所であり、いまでも、客間の中心とし、上座(かみざ)として大切にされる。
また、床の脇に付書院(つけしょいん)を作る形式もある。
で、座敷の順序は次のとおりである。

  1. 最上席は、床柱の前、または床の間のまん前である。
  2. 次席は、付書院の前である。
    このとき床の間に正対した位置から見て、付書院が床の間の左側にあるものを、本勝手(本床)という。
    また、付書院が床の間の右側にあるものを、逆勝手(逆床)という。
    で、次席が最上席の右脇であれば、3番席は左脇である。
  3. 一般原則として、入口に遠い奥ほど上座であり、入口に近いほど下座である。
    入口が2つある部屋では、便所や台所に近いほうが下座である。
  4. また、廊下に面して座る位置よりも、庭に面して座る位置のほうが上座である。
  5. 座敷に、床の間が省略されている場合は、窓や額、本棚などが見える位置が上座である。
  6. 主人は、正客に向かい合うのを原則とする。
    で、先方が特別目上の人であるときには、すすめられても上座は遠慮すること。
    (図中、丸1丸2丸3 ・・・ は、客の序列と座る位置を示す。)
  7. 次に、下図1において、A列、B列にある席を、脇座という。
    それに対して、C列、D列にある席を、中の洲座と呼ぶ。
    で、右脇座、左脇座に対して、中の洲座を下座とする。

【型2】襖の開け方
  1. 襖(ふすま)の手前で跪座をする。
    その位置は、跪座をしたときの膝頭が、襖から15cm(こぶし2つ分)ほど離れたところにくる位置とする。
  2. 跪座をしたとき、部屋の中に人がいるならば、ここで、下座・和・浅礼をして、中にいる人に声をかける。
  3. 次に、襖の引き手に近いほうの手を、襖のひき手にかけ、約10cm、開く。
  4. 襖の引き手から手を離す。
    そして、その手を襖の親骨に沿って、床から10cmのところまでおろす。
    この手の動きが、部屋の中にいる人にとって、いまから襖をあけるという合図になる。
    このとき、指先は必ずそろえておかれよ。
    191
  5. 親骨の、下から約10cmのところを押して、からだの中心線まで襖をあける。
  6. 襖をからだの中心線まであけたならば、襖の引き手側の手を、反対の手に代え、さらに押し、からだが入るくらいまであける。
  7. このとき、下座・和・浅礼の姿勢をとり、部屋の中にいる客に挨拶する。
  8. そこで立ちあがり、座敷に入るわけである。
【型3】部屋への入り方
  1. 部屋への入り方には、二とおりある。
    1. 襖をあけたならば、1度立ちあがり、部屋に入り、また、ひざまずいて、襖を閉めるやり方。  
    2. 襖をあけたならば、跪座の姿勢のまま、膝行して部屋に入るやり方である。
  2. どちらの入り方も、最初に部屋に踏み込む足は、必ず、下座側の足とする。
  3. 襖をあけ、1度立ちあがって、部屋に入る場合、襖のほうを向きなおるが、そのときの足の運びは、下図のとおりとする。
    192a
  4. 図3の5、6の位置は、襖に向きなおる形となる。
    この位置で、再び、跪座の姿勢をとる。
【型4】襖の閉め方
  1. 部屋の中に入り、襖に向きなおって座ったならば、部屋に入るとき、襖の引手に近いほうにあった手を図4のようにして、親骨にかける。
  2. そのまま、親骨を持ち、自分のからだの中心まで引いてくる。
    192b
  3. 襖を自分のからだの中心線まで引いてきたならば、その手を反対の手に代える。
    そして、反対の手で、襖が完全に締まってしまう10cm手前のところまで引く。
    193
  4. 次に、その手を離し、襖の引き手にかけて、襖を最後まで締めてしまう。
【説明】
  1. 襖は、中央より下に引き手がついている。
    この引き手より下を、敷居と平行に動かすと、なめらかに、開閉できる。
  2. 手を水平に動かす場合、身体の中央を超えると、無理が、出てくる。
    したがって、襖の開閉では、身体の中央で、手をかえることになる。
【型5】襖・障子開閉の注意事項
  1. 客を、座敷に、案内するときは、中央の襖を開け、客を通されよ。
    自分が、座敷に入る場合は、下座の襖を、身体が通れる程度に開かれよ。
  2. 品物を持って入る場合、片手で開けず、品物を1度、下に置いてから、開かれよ。
    持って入ったあと、下座に置いてから、閉められよ。
    ただし、客に出す食事、お茶などは、上座に置かなければならない。
【型6】待機(客側の作法)
  1. 客は、出入りの邪魔にならない下座の位置で、静かに、主人を待つ。
  2. このとき、手回り品、贈りものは、下座側に置くこと。
  3. 飾ってあるものに、ちょっと、さわって見ることをされるな。
    主人の見える前に、床や棚床の前に進んで見るのは、茶室のみの作法である。
【型7】挨拶
  1. 主人が、在室しているときは、入った下座で、座ったまま、挨拶されよ。
  2. 部屋に通されて、待機していて、主人が入って来たならば、待っていた下座で、挨拶されよ。
【型8】手みやげの出し方(客側の作法)
  1. 挨拶のあとに、手みやげは、さし出されよ。
  2. 商品券、あるいは、水引を掛けたものは、盆にのせて、さし出されよ。
  3. その他の贈りものは、ふくさ、ふろしきをほどいて、しずかにたたみ、そのあと、さし出されよ。
【型9】掛物の拝見のしかた
  1. 掛物や花は、主人の勧めによって、拝見するか、「拝見させていただきます」と断わってからにされよ。
  2. 拝見するときは、床の間から30cm 程度の前まで進み、手を畳の上について、拝見する。
  3. 掛軸各部の名称
    194
    (ア) 本紙 (ほんし)
    (イ) 一文字 (いちもんじ)
    (ウ) 風帯 (ふうたい)
    (エ) 中回し (ちゅうまわし)
    (オ) 上・下 (じょう・げ)
    (カ) 表紙竹 (ひょうしちく)
    (キ) 軸木 (じくぼく)
    (ク) 軸頭 (じくとう)
    (ケ) 掛緒 (かけお)
  4. 拝見する順序
    1. まず、本紙という内容の絵や字を拝見する。
    2. 一文字、風帯、中回し、上下の布を順に、それから、軸頭を拝見する。
  5. 拝見し終わったら、床の間に一礼して、もとの位置に、戻る。
【型10】座敷の壁
  1. 壁に手をついたり、壁をこすって歩いたりされるな。
  2. 座っている人と、壁のあいだが狭いとき、そこを通られるな。
【説明】

日本の壁は、汚れやすく、いたみやすいからである。

【型11】視線
195
  1. 人と向かい合っているときは、相手の額、へそ、肩から3cm の位置を、結んだ四角形の内部を見る。(図中の点線の中)
  2. 注意深く聞き、話すときは、相手の目、乳、肩の線を結んだ四角形の内部を見る。(図中の実線の中)


ホーム 章トップ
前節 先頭行 次節