第5節 座ぶとんの作法
【通説】座ぶとんについての基本的な注意事項
- 座ぶとんには、裏表がある。
「表」とは、中央のしめ糸のふさのついているほうである。
また、座ぶとんカバーが使用されている場合、座ぶとんを真上からみて、チャックについている縫い代がかぶさっているほうが、「表」である。
- 座ぶとんには、前後がある。
「前」とは、座ぶとんの4辺のうち、縫い合わせのないほうである。
袋仕立てのものは、袋の底のほうが、「前」である。
また、座ぶとんカバーが使用されている場合、チャックのついていないほうが、「前」である。
- 座ぶとんの標準サイズは、縦(前後)75cm 、横(左右)55cm とされている。
- 座ぶとんに座るときは、座ぶとんの敷いてある位置より下座側から座る。
- 座ぶとんから降りるときは、座ぶとんより下座側に降りる。
- 座ぶとんは、部屋の中での座る位置を決めてあるものである。
したがって、座ぶとんを勝手に動かしてはならない。
また、座ぶとんを膝もとに引きよせたり、裏を返したりするのは、失礼にあたる。
- 座ぶとんに座るときは、主人に、すすめられてから、主人に軽く会釈して、座ること。
- 来客が、予定されているときは、客が、座るべきところに、座ぶとんを敷いて置くことが、礼儀とされている。
不意に来客があった場合でも、その来客を座敷に通す前に、座ぶとんを敷くべきである。
- 宴席など、座ぶとんが敷きつめられている場合、座ぶとんの下座側から座るのではなく、後方から、膝行して座る。
- 座ぶとんに座ったまま、挨拶してはならない。
【型1】座ぶとんの座り方
- 座ぶとんの敷いてある位置の下座側に立つ。
立つ位置は、下図(A−B)の線と上座側の肩の線が接するところとする。
また、つま先は、下図(C−D)の線と接するところとする。
- 正立の姿勢から跪座の姿勢をとる。
- 跪座の姿勢から正座の姿勢をとる。
- 主人にすすめられてから、主人に軽く会釈して、座ぶとんに座り始める。
- 座ぶとんに座るときは、正座から跪座の姿勢をとる。
- 跪座の姿勢から座ぶとん側の足を半足長、前に出して膝をうかせる。
- 重心を後方に移し、つま先を軸にして、下座側の足で押すような感じで、膝を座ぶとん側(上座)のほうに40度(下座側の脚の膝頭が、座ぶとんのふちに触れるところまで)回転させる。
このとき、下座側の膝は、畳をするような感じで、回転させてよい。
- 両膝を40度回転させた地点に、両膝を降ろす。
- 腰をうかせて、座ぶとん側(上座)の足で開き足をする。
- もう一方の足(下座の足)を、上座の足につける。
- 両膝頭を結んだ線が、座ぶとんの前の端と平行となるように膝行する。
このとき、両膝頭と座ぶとんの前の端との距離は、5cm とする。
- 跪座から正座の姿勢をとる。
【型2】座ぶとんの降り方
- 正座から跪座の姿勢をとる。
- 腰をやや浮かせ、下座の足で開き足をして、下座のつま先を座ぶとんから降ろす。
- もう一方の足(上座の足)を膝退(しったい)させ、下座の足につける。
- 腰をおろし、つぎに、下座の足を半足長、前に出して膝をうかせる。
- 重心を後方に移し、つま先を軸にして、上座側の足で押すような感じで、膝を下座側のほうに40度回転させる。
このとき、上座側の膝は、座ぶとんをするような感じで、回転させてよい。
- 両膝を40度回転させた地点に、両膝を降ろす。
- 両膝頭が、座ぶとんの前の端の延長線と平行になるよう、膝行する。
このとき、上座(座ぶとん側)の下脚(脚の膝から下の部分)と座ぶとんの下座側の端との距離は、すれすれとなるようにする。
- 跪座から正座の姿勢をとる。
【型3】座ぶとんの提供
- 座ぶとんの持ち運び
- 厚い座ぶとんの場合は、そのままの状態で、右手で座ぶとんの中央を支え、左手で座ぶとんの端を持つ。
- うすい座ぶとんの場合は、2つ折りにして、右手で2つ折りにした座ぶとんの中央を支え、左手で座ぶとんの端を持つ。
- 座ぶとんは、お客の上座側に提供する。
- 座ぶとんを提供するときは、座ぶとんの表裏、前後に、充分注意する。
とくに、お客が、座ぶとんに座るときに、お客の膝頭が、座ぶとんの前にくるように提供する。
- 座ぶとんを提供する人は、座ぶとんを置く位置の3歩手前(座ぶとん1枚程度)で立ち止まる。
また、立ち止まったとき、座ぶとんの下座側の端が、下図(E−F)と接するところとする。
- その場で、正立から跪座の姿勢をとる。
- 跪座の姿勢から腰をうかし、1/4 足長を1歩として、3歩、前へ膝行し、両膝をそろえる。
- 身体を屈体させながら、座ぶとんが、放物線を描くように客の横にすすめ、座ぶとんを定位置に置く。
- 座ぶとんを提供するとき、右手の甲が、畳をするようにする。
- 座ぶとんを、お客の上座側に置いたら、上座の手で、座ぶとんのしわを、中央、奥、手前の順でならす。
このとき、しわをならす方向は、お客の座っている方向と反対方向とする。
- 身体を起こして、跪座の姿勢から、正座の姿勢をとる。
- 顔をお客に向けるような感じで、草の礼をして、お客に座ぶとんをすすめる。
- 正座から跪座の姿勢をとり、腰を少々(5cm)浮かす。
- 右足のほうから2歩、膝退する。
これは、お客から少しでも遠くで正立することによって、お客に、圧迫感を与えないためである。
- 2歩、膝退したとき、両膝をそろえず、左足が半足長引けた姿勢をとる。
これは、そのまま、正立に移れる姿勢である。
- 跪座から正立の姿勢をとる。
- お客の前から退去するときは、回転するほうの足(下座の足)を引き、他方の足(上座の足)を動かした足にそろえる。
- 退室する。このとき、踏み出すほうの足は、お客側の足と反対のほうとする。