第６章　和式作法 ◆第５節　座ぶとんの作法

第５節　座ぶとんの作法

1. 座ぶとんには、裏表がある。
   「表」とは、中央のしめ糸のふさのついているほうである。
   また、座ぶとんカバーが使用されている場合、座ぶとんを真上からみて、チャックについている縫い代がかぶさっているほうが、「表」である。
   
   
2. 座ぶとんには、前後がある。
   「前」とは、座ぶとんの４辺のうち、縫い合わせのないほうである。
   袋仕立てのものは、袋の底のほうが、「前」である。
   また、座ぶとんカバーが使用されている場合、チャックのついていないほうが、「前」である。
   
   
3. 座ぶとんの標準サイズは、縦（前後）７５cm 、横（左右）５５cm とされている。
   
   
4. 座ぶとんに座るときは、座ぶとんの敷いてある位置より下座側から座る。
   
   
5. 座ぶとんから降りるときは、座ぶとんより下座側に降りる。
   
   
6. 座ぶとんは、部屋の中での座る位置を決めてあるものである。
   したがって、座ぶとんを勝手に動かしてはならない。
   また、座ぶとんを膝もとに引きよせたり、裏を返したりするのは、失礼にあたる。
   
   
7. 座ぶとんに座るときは、主人に、すすめられてから、主人に軽く会釈して、座ること。
   
   
8. 来客が、予定されているときは、客が、座るべきところに、座ぶとんを敷いて置くことが、礼儀とされている。
   不意に来客があった場合でも、その来客を座敷に通す前に、座ぶとんを敷くべきである。
   
   
9. 宴席など、座ぶとんが敷きつめられている場合、座ぶとんの下座側から座るのではなく、後方から、膝行して座る。
   
   
10. 座ぶとんに座ったまま、挨拶してはならない。

1. 座ぶとんの敷いてある位置の下座側に立つ。
   立つ位置は、下図（Ａ−Ｂ）の線と上座側の肩の線が接するところとする。
   また、つま先は、下図（Ｃ−Ｄ）の線と接するところとする。
   
   
2. 正立の姿勢から跪座*の姿勢をとる。
   第６章１節【型３】「跪座」を開きます。
   
   
3. 跪座の姿勢から正座の姿勢をとる。
   
   
4. 主人にすすめられてから、主人に軽く会釈して、座ぶとんに座り始める。
   
   
5. 座ぶとんに座るときは、正座から跪座の姿勢をとる。
   
   
6. 跪座の姿勢から座ぶとん側の足を半足長、前に出して膝をうかせる。
7. 重心を後方に移し、つま先を軸にして、下座側の足で押すような感じで、膝を座ぶとん側（上座）のほうに４０度（下座側の脚の膝頭が、座ぶとんのふちに触れるところまで）回転させる。
   このとき、下座側の膝は、畳をするような感じで、回転させてよい。
   
   
8. 両膝を４０度回転させた地点に、両膝を降ろす。
9. 腰をうかせて、座ぶとん側（上座）の足で開き足をする。
   
   
10. もう一方の足（下座の足）を、上座の足につける。
    
    
11. 両膝頭を結んだ線が、座ぶとんの前の端と平行となるように膝行する。
    このとき、両膝頭と座ぶとんの前の端との距離は、５cm とする。
    
    
12. 跪座から正座の姿勢をとる。

1. 正座から跪座の姿勢をとる。
   
   
2. 腰をやや浮かせ、下座の足で開き足をして、下座のつま先を座ぶとんから降ろす。
   
   
3. もう一方の足（上座の足）を膝退（しったい）させ、下座の足につける。
   
   
4. 腰をおろし、つぎに、下座の足を半足長、前に出して膝をうかせる。
   
   
5. 重心を後方に移し、つま先を軸にして、上座側の足で押すような感じで、膝を下座側のほうに４０度回転させる。
   このとき、上座側の膝は、座ぶとんをするような感じで、回転させてよい。
   
   
6. 両膝を４０度回転させた地点に、両膝を降ろす。
   
   
   
   
7. 両膝頭が、座ぶとんの前の端の延長線と平行になるよう、膝行する。
   このとき、上座（座ぶとん側）の下脚（脚の膝から下の部分）と座ぶとんの下座側の端との距離は、すれすれとなるようにする。
   
   
8. 跪座から正座の姿勢をとる。

1. 座ぶとんの持ち運び
   
   
   1. 厚い座ぶとんの場合は、そのままの状態で、右手で座ぶとんの中央を支え、左手で座ぶとんの端を持つ。
   2. うすい座ぶとんの場合は、２つ折りにして、右手で２つ折りにした座ぶとんの中央を支え、左手で座ぶとんの端を持つ。
   
   
2. 座ぶとんは、お客の上座側に提供する。
   
   
3. 座ぶとんを提供するときは、座ぶとんの表裏、前後に、充分注意する。
   とくに、お客が、座ぶとんに座るときに、お客の膝頭が、座ぶとんの前にくるように提供する。
   
   
4. 座ぶとんを提供する人は、座ぶとんを置く位置の３歩手前（座ぶとん１枚程度）で立ち止まる。
   また、立ち止まったとき、座ぶとんの下座側の端が、下図（Ｅ−Ｆ）と接するところとする。
   
   
   
   
5. その場で、正立から跪座の姿勢をとる。
   
   
6. 跪座の姿勢から腰をうかし、1/4 足長を１歩として、３歩、前へ膝行し、両膝をそろえる。
   
   
7. 身体を屈体させながら、座ぶとんが、放物線を描くように客の横にすすめ、座ぶとんを定位置に置く。
   
   
8. 座ぶとんを提供するとき、右手の甲が、畳をするようにする。
   
   
9. 座ぶとんを、お客の上座側に置いたら、上座の手で、座ぶとんのしわを、中央、奥、手前の順でならす。
   このとき、しわをならす方向は、お客の座っている方向と反対方向とする。
   
   
   
   
10. 身体を起こして、跪座の姿勢から、正座の姿勢をとる。
    
    
11. 顔をお客に向けるような感じで、草の礼をして、お客に座ぶとんをすすめる。
    
    
    
    
12. 正座から跪座の姿勢をとり、腰を少々（５cm）浮かす。
    
    
13. 右足のほうから２歩、膝退する。
    これは、お客から少しでも遠くで正立することによって、お客に、圧迫感を与えないためである。
    
    
14. ２歩、膝退したとき、両膝をそろえず、左足が半足長引けた姿勢をとる。
    これは、そのまま、正立に移れる姿勢である。
    
    
15. 跪座から正立の姿勢をとる。
    
    
16. お客の前から退去するときは、回転するほうの足（下座の足）を引き、他方の足（上座の足）を動かした足にそろえる。
    
    
17. 退室する。このとき、踏み出すほうの足は、お客側の足と反対のほうとする。