第6章 和式作法 ◆第1節 立居振舞
次節

第1節 立居振舞

【型1】正立
【型2】正座
【型3】跪座(きざ)
【型4】正立から跪座へ
【型5】跪座から正座へ
【型6】正座から跪座へ
【型7】跪座から正立へ
【型8】歩き方
【型9】立っての回り方
【型10】立っての開き方
【型11】座ってのまわり方
【型12】座っての開き方

【型1】正立
  1. 頭は、耳のうしろの位置から、肩に向かっておろした線が、地面と垂直となるように、胴体の上に素直にのせる。
    このとき顎があがらないように注意する。また、着物の衿と衿足のあいだが、すきすぎないように注意する。
    この着物の衿と衿足のあいだは、一般に拳(こぶし)の幅くらいあける。
    しかし、サービス・サイドに身を置く者は、これより少しせまくしたほうがよい。 
    155-1
  2. 視線は、畳の縦の長さの3倍(5m40cm)くらい前方の床の上に置く。

  3. 胴体は、まず、へその真裏あたりの背骨をまっすぐにのばす。そして、背すじをまっすぐにする。
    155-2

  4. 足は、平行に踏む。女性は、両足のあいだをつけて踏む。しかし、男性は、両足のあいだを 3cm くらいあけて踏む。
    156a-1 156a-2

  5. からだの重心は、土踏まずのやや前方にかける。
    156b

  6. 手は、自然に垂れ、ももの斜前方に軽く置く。
    このとき手指のあいだは、離さずにつけたままとする。
    そして、親指と小指のあいだをせばめるような気持ちで、手の甲にまるみを持たせる。
    156c

  7. 肱は、あまり張らないこと。
    胴体と肱のあいだは、握り拳ひとつが入るくらいあけておく。
    157a 157b 157c

  8. 呼吸は、胸に吸気を溜めずに、腹式呼吸のつもりで静かに行なう。
    (足呼吸*する)
【型2】正座
  1. 上体は、正立と同様である。
    視線は、畳の長さ2枚分(3m60cm )くらい前方の、床の上に置く。
    背すじは、まっすぐにする。頭は、正立と同じく、正しく上体に据える。
    158a

  2. 手は、指が開かないようにして、ももの上に自然にのせる。
    このとき、手の形は、親指と小指のあいだを狭ばめるような気持ちで、甲にまるみを持たせる。
    158b

  3. 肱は、あまり張らない。胴体と肱のあいだは、握り拳がひとつ入るくらいにあける。
    159a

  4. 膝と膝のあいだは、女性の場合、ぴたりとつける。
    男性の場合、握り拳ひとつが入るくらい(7〜10cm)あける。
    子供の場合も同様とする。
    159b

  5. 足は、男女とも、右足の親指を下に、左足の親指を上にして、両足の親指を重ねる。
    160a

  6. 身体がそり気味になりやすいので、自分の膝が短く見えるように、やや、前傾する。
    160b
【型3】跪座(きざ)
  1. 跪座の姿勢は、正座から、両足を爪立てた姿勢である。
    跪座の姿勢において、上体は正座の姿勢よりごくわずかに前傾する。
    頭は、顎が上がらないよう注意し、まっすぐに胴体に据える。
    視線を置く位置は、正座と同じく、畳の縦の長さ2枚分(3m60cm)前方の床の上に置く。
    手の位置は、正座と同じである。
    両足の踵(かかと)の内側は、互いにつける。
    161a

  2. 足のくるぶしを中心として、爪立てた足の甲と、足のすねがつくる角は、その角を鋭角にする気持ちで曲げる。
    161b

  3. 尻は、両足の踵(かかと)の上にしっかりと載せ、上体の重みをかける。
    162a

  4. この跪座の姿勢は、低い位置で動作をするときに多く用いる。
    また、正立から正座に移るとき、反対に、正座から正立に移るとき、必ず、この跪座の姿勢をとる。
【型4】正立から跪座へ
  1. 正立から跪座に移るには、まず、左足を半足長(自分の足の長さの半分)後ろへひく。
    このとき、からだの重心は、両足の中間に置く。
    162b

  2. 次に、上体が前後左右に揺れないように注意し、ゆっくり沈みこむように腰をおろしてゆく。
    163a

  3. 左膝を先に床の上につける。
    このとき、急に、どすんと、つかないように注意する。
    つぎに、右膝を床につけて跪座の姿勢となる。
    163b
【型5】跪座から正座へ
  1. 爪立てている足を、右足から静かにねかせてゆく。
    このとき、上体が前かがみとならないように注意する。
    次に、左足を同様にねかせ、右足の親指の上に左足の親指を重ねる。
    164a

  2. 尻を踵の上におろして、正座の姿勢となる。
    164b
【型6】正座から跪座へ
  1. 正座の姿勢から、まず、両脚のももに力を入れ尻を少し浮かせる。
    このとき、上体が前かがみとならないよう注意する。
    165

  2. 左足から、静かに爪立ててゆく。
    次に右足を爪立て跪座の姿勢となる。
    165b
【型7】跪座から正立へ
  1. 跪座の姿勢から、右足を半足長(自分の足の長さの半分)前に出し、右脚全体を浮かせるようにする。
    166a

  2. からだの重心は、両足の中間に置く。左脚の膝を床から離し、つづいてゆっくりと立ち上がってゆく。
    このとき両脚の膝に力がかかる。上体が、揺れないようにする。
    166b

  3. 立ち上がったら、左足を半足長前に出して、右足とそろえる。正立の姿勢となる。
    167a
【型8】歩き方
  1. 足は、平行に踏み、両足が1本の線をはさむように平行に踏み出す。
    167b

  2. 重心は、常に、からだの中央にくるようにする。
    167c

  3. 手は、自然に、ももにつけて置く。

  4. 歩幅は、畳1帖の縦の長さを、女性の場合6歩で、男性の場合3歩半で歩く歩幅を基本とする。
    168

  5. 歩幅は、早く進む場合はせまく、遅く進む場合はやや広くする。

  6. 視線は、畳の縦の長さの3倍(5m40cm )くらい前方に置く。

  7. 後から運ぶ足は、足の裏を見せないように、踵をなるべく床につけるように運ぶ。

  8. 膝よりも、ももで歩くようにする。
    また、後ろの足を前に運ぶような気持ちで、常に、同じスピードで歩く。
    169a

  9. 室内で歩く場合、敷居を踏まないように注意する。
    また、畳のふちを踏まないようにする。
【型9】立っての回り方
  1. まず、90度方向を変える場合、向こうとする方向と反対側の足を、向こうとする方向にある足のつま先に、T字型にかぶせる。
    169b

  2. 次に、向こうとする方向にあった足をそろえる。
    170a

  3. 方向を、180度変える場合は、方向を90度変える場合と同様、まず、回ろうとする方向と反対側の足を、回ろうとする方向にある足のつま先に、T字型にかぶせる。
    170b

  4. 次に回ろうとする方向にあった足を、最初に動かした足の、踵の後ろにT字型にかぶせる。
    170c

  5. 踵の後ろにかぶせた足と反対の足を動かし、両足をそろえる。
    170d

  6. 視線は、90度回る場合、180度回る場合、ともに、腰の向いた方向へ自然に移してゆく。
    171a

  7. 回る方向は、常に、人に背を向けず、尻を向けないよう、上座のほうに向かって回るよう心がける。
【型10】立っての開き方
  1. 立った姿勢で回転する動作には、「回る」の他に「開く」がある。
    「回る」場合は、足を、他の足のつま先にかぶせて、前に出るような感じで回転する。
    これに対して、「開く」場合は、足を他の足の踵の後ろにひいて、後ろにさがるような感じで回転する。
    171b

  2. 90度開く場合、まず、回転する方向にある足をひき、他方の足の踵の後ろに、逆T字型に重ねる。
    172-1

  3. 次に、動かした足と反対側の足を、まわしてそろえる。
    172-2

  4. 次に、180度開く場合は、まず、90度開く場合と同じく、回転する方向にある足をひき、他方の足の踵の後ろに、逆T字型に重ねる。
    172-3

  5. 動かさないで置いた足を180度まわし、つま先を、回転する方向にある足の内側につけ、逆T字型をつくる。
    172-4

  6. 最後に、回転する方向にある足をひき、両足をそろえる。
    172-5

  7. 視線は、腰の動きにあわせて、自然に動かす。


【型11】座っての回り方
  1. まず、跪座の姿勢から、回る方向の側にある足を半足長前に出し、膝を少し浮かす。
    このとき、重心は、主に、両足のつま先にかかるようにする。また、もう片方の膝は、軽く床につけて、からだをささえる。
    173a

  2. 半足長前に出した足のつま先を中心にして、両膝を徐々に回してゆく。
    このとき、腰をまわすような気持ちで回す。35度くらいずつ、両足の間が開かないように、回るとよい。
    また、床に軽くつけてある膝と、その足のつま先を使い、床を押すようにして回る。

    1. まず、跪座の姿勢から、回る方向の側にある足を半足長前に出し、膝を少し浮かす。
      重心は、主に、両足のつま先にかかるようにする。また、もう片方の膝は、床につけて、からだをささえる。
      また、図1の記号Aと、実線の矢印は、まわり始める前の、からだの向きを示す。
      173b
    2. 膝を浮かしたほうの足のつま先を中心として、もう一方の膝とつま先を使い床を押すようにして回る。
      このとき、35度くらいずつ、徐々に回るようにする。
      174a
    3. さらに回るには、同様に、床についた膝と、その足のつま先を使い床を押すようにする。
      このとき、両膝のあいだはつけて、回転する方向にある脚に、もう片方の脚を添わせるようにするとよい。
      図3のAの位置は、まわり始める前に、からだが向いていた方向である。
      図3のBの位置は、Aから35度まわった位置である。
      174b

    4. 図4は、図3の位置から、さらに、35度くらいまわった場合の図である。
      まわりかたは、図2、図3の場合と同じである。
      日常生活では、座った姿勢で、90度回ることができれば、充分である。
      175a

    5. 図5は、Aの向きからまわって180度の方向を向いたときの図である。
      座わって90度回るときは、その90度を35度、35度、20度とわけて回るとよい。
      また、180度回るときも、35度くらいずつ、徐々にまわって、最後に、その角度を小さくして、正確に180度まわった方向を向くようにするとよい。
      175b

  3. 和服を着て、座わったまま、右方向にまわろうとする場合、着物の打ち合わせのところが乱れぬよう、右手で押さえる。
    176a

  4. 回る方向は、常に、人に背を向けず、また、尻を向けないよう、上座の方向に回る。
【型12】座っての開き方
  1. 座っての開き方は、座ぶとんに乗ったり、降りたりするときなどに使う動作である。
    この動作は、回る動作が足のつま先を、回転の中心にしたのに対して、膝を、回転の中心とする。
    で、まず、跪座の姿勢となる。次に、開く方向に近いほうの膝を、もう一方の膝の斜め前に、45度の角度で移す。
    このとき両膝はつけ、この両膝を中心に、両脚は45度に開いていることになる。
    176b

  2. また、このとき、尻をあげて腰がのびたり、尻が脚のあいだに落ち込んだりしないようにする。

  3. 次に、開く方向に近い足の反対側の足を、いま、動かした足(開く方向に近い足)にそろえて、跪座の姿勢となる。
    177

  4. これで、最初に向いていた方向から、45度開いたことになる。
    この動作をくり返して、90度、180度と、開いてゆけばよい。

第6章 和式作法
[立居振舞] [座 礼] [立 礼] [座敷作法] [座ぶとんの作法] [日本茶の歴史]
[茶のいれ方] [日本茶の供茶作法] [和 酒] [接待側として、宴会の始まりまでのお酌]
[日本料理の概念] [日本料理の流れ] [本膳料理] [本膳料理の体系]
[茶懐石料理の沿革] [茶懐石料理作法] [宴会料理] [宴会料理食事作法]
ホーム
先頭行 次節