第50節 朝食作法
【通解】朝食の種類
- 朝食の形態として、イギリス型、アメリカ型、フランス型の3種類に大別される。
- イギリス型の一般的朝食コース
- フルーツ(コースの終わりに食べる人もいる)
- 紅茶、コーヒー
- シリアル(Cereal)、ポリッジ(Porridge)
- 玉子料理、魚料理、肉料理の中から、1〜3種類を選んで食べる。
- パン、トースト
- ジャム、蜂蜜、ママレード、チーズ類(常卓品)
- その他
つぎに、III. 以降について、もう少し、詳しく述べてみよう。
- シリアル類
- コーン・フレークス
コーン・フレークスは、デザート・スプーン(中型スプーンのこと)を使い、冷たいミルク、または、あたたかいミルクをかけて食べる。好みによって、砂糖をシュガー・ポットに付いているシュガー・レードルに1杯か2杯ほど用いる。
また、蜂蜜を入れることもある。
食べおわったならば、デザート・スプーンは、凹面を上にして真横にして置く。安定の悪い場合は、下皿の上に置いてもよい。
- オート・ミール
オート・ミールは、デザート・スプーンを使い、暖かいミルクをかけて食べる。好みにより、砂糖、蜂蜜を用いる。
- 玉子料理
- ボイルド・エッグ
ボイルド・エッグには、3分ボイルド、5分ボイルド、ハード・ボイルドがあり、ウェーターに、好みのゆで方を注文する。
- ボイルド・エッグの食べ方
ボイルド・エッグは、ティー・スプーンを用いて、次のようにして食べる。
- 塩を、皿の6時の位置にとる。
- ティー・スプーンの柄じりで、玉子の上部1/4ほどの所を、コツコツと1まわり、たたきこわす。このとき、玉子をエッグ、スタンドごとぐるぐるまわしてよい。
(固い玉子のときは、上半分ほどの殼をとる。)
- 上の部分を手にとり、スプーンの背を、上の部分の中の白身で少し湿らせて、そこに塩をつけたのち、スプーンで身をすくって食べる。殼は、皿の1時の位置に置く。
- エッグ・スタンドに入っている玉子もすくって食べる。塩をスプーンの背に付けること、前に同じ。
- 左手に玉子を持ち、右手にスプーンを持って玉子を食べているとき、隣の人に塩を取ってくれと言われたならば、右手に持っているスプーンを皿の3時から4時の間に上向きにして立てかけられよ。スプーンを持った手で、塩をとらぬこと。
- 食べ終わったならば、殼でふたをして、皿の12時の位置に(殼の口をつとめて、こちら向きにして)置き、2個目をエッグ・スタンドに立て、同様にして食べる。
- もし、ボイルド・エッグを紅茶茶碗に殼ごと入れて出してきたならば、この卵を割って、中味を茶碗に入れ、塩をかけて、スプーンで食べる。殼は、皿の上に。
- 玉子が、かたくゆでてあるときは、その約1/2をこわす。
- 2つ目の玉子が、安定していないときは、底の部分をこわしてから、置くこと。
- 食べ終わった玉子の位置は、そのあいている口をなるべく自分のほうに向けられよ。
- 玉子の殼を吐き出すとき、それは、スプーンに吐き出されよ。
- フライド・エッグ
フライド・エッグは、片面だけ焼くサニー・サイド・アップ、両面を焼くターン・オーバー(オーバー・イージー)、さらにもう1度返して焼くオーバー・ハードと種類があるので、焼き方をウェーターに注文する。
- フライド・エッグの食べ方
フライド・エッグは、デザート用ナイフ、フォーク(中型)で食べる。サニー・サイド・アップは、黄味を食べるためデザート・スプーンを用いることはない。
- 左側から、ナイフ、フォークで切りながら、白身を食べる。
- サニー・サイド・アップのとき、キミで皿が汚れるが、このときは、シロミだけをきれいにフォークですくうようにされること。
- 最後に、皿の上に残った黄味は、ナイフとフォークを使って、パンの上にのせて食べられよ。けっしてパンでしごかない。
- ハム・エッグまたはべーコン・エッグ
ベーコンの場合、その焼き加減を注文できる。
ハム・エッグとベーコン・エッグは、卵の黄味をつぶし、ハムやベーコンにつけて、食べられよ。
またベーコンがカリカリに焼いてあるときは、ナイフでは切りにくいので、手で持って、食べられよ。
- スクランブルド・エッグ
いわゆる「いりたまご」である。
- オムレツ
オムレツの中味も、いろいろ、注文できる。
- 魚料理
鮭のフライ(フライド・サーモン Fried Salmon)にしんの燻製(キッパード・ヘリング Kippered Helling)
- 肉料理→イギリス
腎部肉のステーキ(ランプ・ステーキ Rump Steak)
ハム、ソーセージ、べーコンなど
- その他、サラド、ヨーグルト
- トースト
トーストには、バタを塗り、好みによって、ジャムやママレードをつける。トーストは耳の部分を持ち、一口大にちぎって食べる。サンドイッチのようにかじって食べないようにすること。(欧米人にも、かじって食べている人が多いが、ちぎって食べるのが行儀のよい食べ方とされている)
- アメリカ型の一般的朝食コース
- ジュース類
- シリアル、ポリッジ
- 玉子料理
- トースト・パンケーキ
- コーヒー、紅茶
- ジャム、蜂蜜、ママレード、チーズ類(常卓品)
このコースをイギリス型と比べてみて相違のあるのは、ジュース、パンケーキが新しく出現しているのに対し、フルーツ、魚料理などがないことである。
で、新しく出現したものについて述べてみよう。
- ジュース類
ジュース類には、オレンジ・ジュース、パイナップル・ジュース、トマト・ジュース、ミルクなどがある。
ジュースは、食前酒のような意味を持ち、いままで眠っていた胃を起こすものである。
- パンケーキ
いわゆる「ホットケーキ」のことである。
ホットケーキと同じ食べ方。
- フランス型の一般的朝食コース
フランス型は、コンチネンタル・ブレックファーストの主流をなすものである。
で、これは、イギリス・アメリカ型などを含めたものが、1度に出てくる。
- Café complet
Petit pain(プチ・パン)、Croissant(クロワッサン)、Baguette(バケット)、Biscotte(ピスコツト)、Brioche(ブリオシュ)、Flúte(フリュート)
- Cafe au lait(大きなカップでミルクを入れたもの)
- 卵料理
- フルーツ
- その他
で、フランス型として、あまり朝食に手間をかけない。
- ナプキン
朝食には、ディナー用に比べて小型のナプキンが用いられる。また、色がついていることが多い。
リゾート・ホテルなどでは、顧客のためにナプキン・リングを用意してくれることがある。
この場合、自分専用のナプキンとなるので、汚れていない場合は、丸めてリングにさしこむ。汚れた場合は、リングにはめずに置く。
- 表情など
外国人は、朝食の際、顔見知りの人には、必ず、挨拶をかわす。日本人の場合、とかく、無口で、無表情になりやすいので、清々しい顔、ニコヤカな挨拶を忘れないようにしたい。
【参考】
- イギリスでは、「朝は金なり」「昼は銀なり」「夜は銅なり」ということばがある。
それは、フルーツを朝食に食べると、金に匹敵する効果があるという意味。島国で、フルーツの少ない国であるから、おそらく、朝、フルーツを食べることは、たいへん、ぜいたくなことだったのであろう。
紅茶を主に飲むのは、植民地時代、インドから手に入りやすかったため。
また、ヘリングなどの魚料理を多く用いるのは、北海沿岸地域の1つの特長である。
- アメリカは、カリフォルニア・オレンジの産地であるから、朝からジュースを飲む。
- オランダ、ドイツ、スイスなどでは、パンにソーセージなどを挾み、ミルクを飲み、チーズをよく食べる。酪農国ということ。
- つまり、国による産物の違いが、食卓に反映しているのである。
【型1】朝食のセッティング
朝食には、大型肉用ナイフとフォークを用いないで、デザート・ナイフとフォーク(中型)を用いる。