第7章 飲食・喫煙 ◆第49節 立食パーティ
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第49節 立食パーティー


【参考】立食パーティーの種類

立食テーブルの形式には、カクテル・パーティー(Cocktail Party)、カクテル・ビュッフェ・パーティー(Cocktail Buffet Party)、ビュッフェ・パーティー(Buffet Party)などがある。

  1. カクテル・パーティー(Cocktail Party)
    その名の示すごとく、あくまでも飲み物主体であり、料理は、カナッペ(Canape)、温冷オードーブル(Hot and Cold Hors d'oeuvre )などの軽いもので、原則としてフォークや皿を使用せず、フィンガー・フード(Finger Food)を供する。時間は、午後4時〜7時の夕食前に催すが、パーティーに引続いて正餐となる事が多い。会場内には、テーブル、椅子などは特別の場合を除いて配置しない。
  2. カクテル・ビュッフェ・パーティー(Cocktail Buffet Party)
    Cocktail Party にある程度食事的要素を加わえたもの。カナッペ(Canape)、オードーブル(Hors d'oeuvre)の外にスモーク・サーモン(Smoked Salmon)、ロブスター・メディロン(Lobster Medillon)、ビーフ・ストロガノフ(Beef Stroganoff)、各種お肉料理(Assorted Meats)、サラド(Salad)、デザート(Dessert)などが加わり、客は、好みの料理を食べ、好みの飲み物をオーダーできるようになっており、China Ware、Silver Ware も使用し、テーブルや椅子も会場に若干そろえる。模擬店料理(鮨、やきとり、そば)を加えて雰囲気を盛り上げる。
  3. ビュッフェ・パーティー(Buffet Party)
    Full Course の料理を Platter、Chafing dish に盛り付けて、Buffet Table に初めから並べられている。全出席者の食卓と椅子を用意し、客は順次 Buffet table から料理を取り分けて自分の食卓でいただく。飲み物は Whiskey、Cocktail 類、Wine などを出すのが普通である。
【型1】立食パーティーでの作法
  1. もし、開催時刻が指定されているならば、15分前主義を守られよ。指定されていない場合は、その時間内であれば、いつ、行っても、いつ、引上げても、かまわない。ここに、立食パーティーの気軽さがある。
  2. 会場には、多くの場合、「受付」がある。場合によって、その「受付」が、横の、わかりにくいところにあることもある。で、出席者は、まず、自分から積極的に「受付」を探すことが、作法とされる。日本では、しばしば、「われこそは名士であるぞ」とばかり、受付に立ち寄らず、いきなり、会場に入ってしまう人がいる。これは、主催者が、整理上、あとになって、はなはだ、苦労することになる。
  3. 会場に入っていくと、しばしば、ウェーターが、カクテル、シェリー、ジュースなどを、持ってきてくれる。飲み物をウェーターから受け取ったあとでも、先でもかまわないから、主催者(ホスト、ホステス)を探して行って挨拶されよ。主催者に、挨拶する前に、知人と目があったならば、会釈のみをされよ。
    また、知人に、会釈のみならず、話しかけられそうになったら、「後ほど、また」と言って逃げる。
  4. ウェーターが、飲み物を持って来てくれたとき、これを、「要らない」と断わらずに、受け取られよ。しかし、たとえば、ジュースを飲みたいとき、カクテルをすすめられたといった場合、その飲み物の種類について、断わることは、いっこうに、さしつかえない。
  5. このウェーターに対しては、必ず、スマイルをもって、応対されよ。
  6. この飲み物を手渡されるとき、はじめに、紙ナプキンがあれば、それを取り、左手に持ち、ついで、右手で、ウェーターの持っている盆の上から、飲み物を取られよ。 「ありがとうございます」または「Thank you very much」ということ。
  7. 飲み物は、紙ナプキンを、グラスの下にあてがって、左手で持って移動されよ。水滴が、衣服に落ちるのを防ぐためである。
    飲むときは、必ず、立ちどまって飲まれること。
    その飲むときは、グラスを右手に持ちかえて、飲まれよ。そのとき、紙ナプキンは、グラスの底に添えておく。
    図:220a
  8. もし、飲み物が口に合わないときは、飲みかけのまま、そっと、チラシ・テーブル、または、サイド・テーブルの上に、置いておかれよ。
  9. 料理の取り方
    1. 料理は、まず皿1枚とミート・フォーク1本を取り、オードーブル、魚、肉、サラドと進み、その間にサンドイッチをつまむ。
    2. ブュッフェ・テーブルは、料理を取り終わったならば、離れること。ブュッフェ・テーブルのまわりでは、召し上がらないように。
    3. 料理は、何回取っても良い。しかし、自分の皿を山盛りとされるな。
    4. 料理を取るとき、サービス・スプーンを右手に、サービス・ナイフを左手に持つこと。
      サービス・スプーンで、料理をすくってから、サービス用フォークで、押さえて取るように。
      片手で、これらを扱われるな。ウェーターでも、正式には、両手を使う。
    5. 取りにくいもの、また、ソースが、たれそうな場合、極力、自分の皿を、プラッターに近づけられよ。
    6. ソースが、かかっている料理の場合、スプーンで、すくわれよ。
    7. ソース・ポットに、入っているものは、ソース・ポットを、左手にもって、ソースをかけられよ。
      図:220b
    8. サービス用スプーン、フォークは、使い終わったならば、次に、使う人が取りやすいように、図のように置かれよ。
      図:221
    9. サンドイッチやカナッペなどの手で食べるものは、手で、取られよ。
    10. 料理を取るとき、腰をあまり曲げられるな。背を曲げられよ。片足を後ろに、はねて良い。このとき、前の膝を少し曲げると良い。
    11. おいしそうに見えるので、たくさん取ったところ、食べてみて、はなはだ、口に合わないことがある。このとき残すと、招待者側に対して、気まずいことになるので、ブュッフェ・スタイルの場合、1品5cm四方ぐらいまでに押さえるのが、よい。(とくに、アメリカに、行ったとき、注意が要る)
      また、サンドイッチを、2切れは、取られよ。
  10. 料理の食べ方
    1. サンドイッチをかじるときは、少し、顔を下に向けられよ。
    2. 食べるときには、かがみこむ姿勢を、とられるな。
    3. 食べるとき、フォークを使って食べるが、片手が余っているので、この片手で食べ物をちょっと押さえて食べてよい。
  11. 皿の持ち方
    皿を持つ左手の肘は、しめられよ。そのかわりに、手首を曲げられよ。 皿は、食べるとき、歩くときなど、常に、胸の高さに、保たれよ。
  12. 皿が、ソースなどで汚れることがある。そのようなときには、こまめに、皿をとりかえること。この際、汚れた皿は、
    1. ウェーターに渡す。
    2. ちらしテーブルの上に置く。
      決して、ブュッフェ・テーブル(元卓)の上には、置かれないように。
      図:222a
【参考】

サイド・テーブルは、本来ウェーターが使用するものである。汚れた皿、シルバー、グラスなどを直接裏に持ってゆかず、このサイド・テーブルに置く。
また、追加の新しい皿、シルバー、そのほかの備品を置いておく。たとえば、ブュッフェ・パーティーの場合、チラシ・テーブルにある、お客の使った皿をウェーターがさげる。何枚かの皿をさげたのち、その皿をサイド・テーブルに置き、そこにある新しい皿を元卓に補充する。そうしてからサイド・テーブルにある汚れ物をまとめて洗い場に持ってゆく。こうするとウェーターのサービスがよりよくなる。であるから、チラシ・テーブルと、サイド・テーブルは、本来、使われる性質が違うものである。

  1. 立食パーティーにおいて、シルバーなどを落とした場合は、ウェーターを呼び、処理してもらうこと、決して自分で拾わない。
    通路を妨げるときは、足でそっと、じゃまにならないように処理する。
  2. 皿には、2〜3種の料理を取って立食すること。グラスは、つぎに示す図のように、皿の上に乗せるのが、美観上、よい。
図:222b
  1. カクテル・グラスは、自分のみぞおちより下に、さげられるな。
    図:222c
  2. 口を拭くとき、ちょっと、下を向かれよ。
  3. カクテルなどの飲み物はムードを楽しみ、社交の潤滑油とすべきもので、5〜6杯が限度である。また、その日、飲む酒は、1種類とされよ。
  4. 皿のガチャガチャという音をたてられぬように。
  5. 食べ物は、必ず、自分の分だけを取られよ。親切のつもりで、取ってきた皿を人にすすめるのは、失礼な行為である。また、人に頼むことも、してはならない。食べ物を取ってきてくれるよう頼むことができるのは、ウェーターに対してだけである。
  6. 特定のグループだけが固まることなく、大ぜいの人と交流できるのが特色であるので、特定人だけでなくホール周囲を回りながら人々と交流すること。1カ所には、10分を限度とされよ。しかし、5分間は、おろうとされよ。
    男性客は、コーナーに、自分や他の人の飲み物を取りに行ってよい。
    女性客は、取りにいけない。
  7. ホール周囲の回り方
    ホール周囲の回り方はテーブルを中心に、すべて左回りに移動する。
  8. 会話は、他人のうわさ話、政治、宗教の話など、論争の的になりやすいものや、スラング、下半身の話、胃腸の話など、他人に不快感を与える話をしないこと。
  9. また、相手を吹きださせようとして、まじめな顔で、おかしなことを、言ってはならない。
  10. くれぐれも、大笑いはしないこと。
  11. 女性は、つねに、ディグニティを失わないように。
  12. ハンドバッグを持って歩くとき、広がらないように。少し前ぎみに、持たれよ。
  13. 床に落ちた物を拾うとき、セビロが着くずれないような姿勢をなされよ。すなわち、片足を引いて、腰を低くし、あまり、かがまない。
  14. たばこは、吸っても、かまわない。しかし、グラスや皿を持ちながら、吸われるな。また、歩きながら、吸わずに、一カ所で吸ってから、動き出されよ。
  15. 立食パーティーにおいての灰皿の位置は、チラシ・テーブルの上に置かれている。また、レセプション・ルームにも置かれる。
  16. 流し目をされるな。また笑っても、まじめさを失われるな。
  17. スピーチをするとき、姿勢を正し、マイクロホンから30cm 程度離れられよ。平気で、マイクを無視されて、よい。
  18. マイクの前では、ハンドバッグを前に持たれよ。
  19. みんなの前で話すとき、サカズキを少し、さげられよ。(チチとヘソの間ぐらいまで)
  20. スピーチの間、聴き手は、つぎの2種類のどちらかの態度をとること。
    1. はっきりと骨盤を話者に向け、スピーチに聴き入る。このとき、酒を手に持っていても、口の中に、酒を入れないこと。食べ物についでも同じ。スピーチが終わったならば、拍手。
    2. 話者を、平気で無視する。しかし、少し、遠慮気味に、声、動作を押さえる。食事をするときは、マイクロホンに背中を向けてすること。スピーチが終わったならば、拍手。そのときは、身体を話者に向けること。
  21. a.b. は、そのときの情況によって、使いわけられよ。
  22. スピーチが始まったならば、いつでも拍手ができるように、つまり、皿をその場に置けるように、そういう場所の側に立っているようにすること。立食パーティーに馴れているかどうか、ここで、判明する。
  23. 疲れてきたならば、椅子に座っても、かまわない。
    「かかとを後ろに、腰おこし……」を実行すること。
    また、足を組んでも、かまわない。しかし、目の前に、誰か来たとき、組んでいる足を ほどくこと。
  24. 立食パーティーにおいて、席に座ったときは、皿を胸の高さから膝の上の位置へ下げる。
  25. つぎのことは、決して、なさらないように。
    1. ズボンのポケットに手を入れる。
    2. 壁によりかかる。
    3. 通路をふさぐ。
  26. 帰るとき、ホスト、ホステスに挨拶に行く。が、まわりに、あまり、目だたないように。
  27. そうして、みんなの中をとおり、退室して行くときも、目立たないように。と申して、コソコソではなく、いわば、手洗に出て行くような風情で去ること。あくまでも、さりげなく、去ることが大切てある。
  28. 受付は、必ず、会場の外にある。
  29. 廊下などに出てみると、みやげ物が積んであることがある。しかし、しばしば、その係員が不在である。こういうとき、みやげ物を貰わないで帰れない。あとで、主催者が、苦労することとなる。と申して、「帰りますから、ください」という素振りもできない。で、みやげ物から、すこし離れたところで、係員の来るのを待っているのがよい。
  30. 胸に、名礼や花かざりなどをつけてもらっていたときは、そのあと、引きつづき、同じ会合(集合写真、儀式など)のあるという特殊な場合を除いて、自分で、これらをはずし、係員に手渡すべきもの。だまって、テーブルの上に置くことは、失礼とされる。また、胸につけたまま、帰ってしまうのも、失礼である。
  31. 正客が、お帰りになったあとに、退室されるのが、正式である。
    フォーマルでないときは、正客より先に失礼しても良い。
    ホスト、ホステスに、どうしても、挨拶が、できない場合がある。
    このようなときは、主催者側のものに、告げて、退室されよ。
【説明】
  1. ある立食パーティーにおいて、A君は、会場に遅れてやって来た。B君は、A君と顔見知りであり、そこで、A君に飲ませようと思って、ビールとカラのグラスを持って、A君のほうに歩み寄った。そのとき、A君は、入口付近のサイド・テーブルで、コップ入りのハイ・ボールを手にしていた。が、いま、B君に気がついた。そのときのA君のやり方というものを、よく考えておきたい。
    1. A君は、ハイ・ボールを、もと、並べてあったところに返しに行った。で、きれいに並べられたところに、いまのコップを1つ加えて、並べた。それから、ひきかえして、B君のコップを受けとり、ビールをついでもらった。
    2. A君は、ハイ・ボールを、もと、並べてあったところに返しに行ったが、ちょっと列からはずして置いて、それから、ひきかえすや、B君のカラのコップを受け取った。
    3. A君は、もよりの「チラシ・テーブル」に、持って来たハイ・ボールを置いて、B君に近づき、B君からカラのコップを受け取った。
    4. A君は、持って来たハイ・ボールを持ったままB君に近づき、ハイ・ボールを左手に持ちかえて、右手にB君のカラのコップを受け取った。
    5. A君は、手に持ったハイ・ボールを、一気に飲みほし、そのカラのコップを、もよりの「チラシ・テーブル」に置いて、B君に近づき、B君のカラのコップを受け取った。
    6. A君は、もって来たハイ・ボールを手に持ったまま、B君に近づき、丁寧に挨拶して、それから、ハイ・ボールをささげて、「これを、いただいてしまったものですから…」と言って、B君のビールを奪い取り、B君のカラのコップについでやり、ハイ・ボールとビールの乾杯をおこなった。
    以上のどれかよいと思われるか。原案は、b. である。
    せっかく取って来たハイ・ボールを、捨ててしまうようなことはしないこと。さりとて、一ぺん手にとったハイ・ボールを、他の客が、そのまま取るようなことを避けること。
    また、A君が、せっかく、酒をついでくれようと近寄ったのであるから、その酒を、素直に受け取ること。(酒は、縁起ものである)
    またハイ・ボールを飲みほすような酒豪ぶりを発揮しないことである。
  2. ある立食パーティーにおいて、ある夫人が、自分で、テーブルから料理を取っていた。そこに1人の男性が、その夫人のために別の皿に料理を取って持って来て、「これ、おいしいですよ」とくれた。その夫人は、どうすべきか。
    1. 両手に皿を1枚ずつ持って、どこかのチラシ・テーブルに行って、その男性のくれた料理から食べ始める。
    2. 自分の取っていた料理の皿を、どこかに素早く置いて、その男性のくれた皿の料理だけを持って、どこかに食べに行く。
    3. 「あら、わたくしも、取っているのですよ。こちらにいただきませんこと」と言って、その男性に、男性のごちそうを持たせたまま、女性自身は、自分の皿を持って、さっさと、どこかに引きさがり、そこで、自分の皿を置いて、男性の持って来た皿を受け取り、男性の皿から食べ始める。
    4. 「あら、わたくしも取っていたのですよ。せっかくのごちそうを、重なりましたわね。こんど、また、いただきますわ」と、男性のごちそうを、さっさと断わってしまう。
    以上のうち、原案は、相手が日本人の場合 a.、相手が、外国人の場合 c. である。
  3. ここで、ブイヨン・カップのスープを取ろうとしている。おいしいスープなので、行列ができている。ところが、ちょうど、わたくしのところまで来たとき、スープがなくなった。
    1. このスープを、後ろの人に渡して、自分は、どこともなくいなくなる。
    2. なにげない顔して、後ろに挨拶もせず、持って行って、ゆっくり飲む。
    3. 後ろを振り向いて、「申しわけございません」と軽く会釈して、どこかへ持って行って、自分で飲む。
    原案は、c. である。
【型2】ホスト、ホステスの役目
  1. 来客の1人ひとりに対する迎える挨拶。
  2. 客同士についての紹介。ことに、仲間はずれになっている客を見付けては、親切や、やさしい友達を紹介してあげること。
  3. 帰り支度をした客を、玄関まで送り出すこと。
  4. ホスト、ホステスは、会場の中をあまり移動されるな。会場の奥付近を定位置とされよ。
【参考】チーズの取り分け
  1. チーズを1度に取る種類は、3種類まで。
  2. 1種類の取り分け量は、30グラムぐらいがよい。
  3. チーズ取り分けの手順
    1. チーズをカットする。
    2. サービス・スプーンとサービス・フォークを使って、カットしたチーズを自分の皿に置く。
    3. チーズに付いているクラッカー、セロリ、その他のものを適量取り分ける。
  1. チーズの切り方

    チーズは、すべて3角形になるよう切る。

    四角形チーズのカット
    図:228a
    円形チーズのカット
    図:228b
  1. なぜ、チーズは三角形に切るのか。
    チーズは、ワインとよく似ている。
    空気に触れさせることにより、そのチーズを、ベストの状態にもってくることができる。
    すなわち、空気を触れさせる面積を広げさせるために、三角形に切るのである。
    また、温度も、チーズをおいしく食べるためには、適温がある。16〜18℃である。これは、ちょうど、室温である。
    このため、冷蔵庫に入れておいたチーズは、食べる1〜2時間前に冷蔵庫から出し、シャンブレ:Chambré(室温にもどす)しなければならない。これも、ワインとはなはだよく似ている。

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