第39節 支払い、チップ
【型1】チェック・プリーズ
「お勘定をお願いします」は「Check, please」でよい。
【参考】勘定書
食事の勘定書には「sub-total」(食べた値段)、「service charge」「local tax」「grand total」の4つの数字がなければならない。
場合によっては、「service charge」を O.K.(チップは要らない)と書いてあることもある。
もし、「service charge」について、何も書いていないとき、そこで、チップ額判定の問題を生ずる。
【型2】チップの渡し方
- 1947年8月15日正午を期して、日本のホテルは、いっせいに、チップを全廃し、代わりに「サービス料」10%を設定することにした。これは、第2次大戦直後、ヨーロッパが、昔ながらのフリー・チップ制を改め、一律サービス料の制度に統一したのと呼応したものである。
ただ、ヨーロッパの場合、そのサービス料には課税されず、また、そのサービス料収入は、すべて、従業員に分配されたのであるが、日本の場合、このサービス料にも課税があり、従業員への分配方法も、はっきりしたものでなかったといった点に、問題を残した。
現在、ヨーロッパでは、再び、フリー・チップ制が、復活しており、サービス料制限も、だいたい、なくなっている。
ところが、日本の現状は、サービス料のほかに、フリー・チップもとるところが多いといった、奇妙な形になっている。この形を、こん後、どのように改良するのかの問題を残す。
- ともあれ、客としてレストランを利用したとき、それか、日本であれ、海外であれ、必ずチップについて気を配らなければならない。
- まず、食後、勘定を支払う場所が、その席で支払う「オン・テーブル」であるか、会計係のところで支払う「キャッシャー・デスク」であるかを食事中に見てとらなければならない。場合によると、帰りがけにキャッシャー・デスクで支払うこととなっているが、オン・テーブルでも、それを可能とするということがある。キャッシャー・デスクでの支払いのときは、チップを加えることが不可能であり、オン・テーブルならば可能となる。
ともに、キャッシャーがいるから、ただ見てもわからないときは、聞かれること。
- いずれにせよ、勘定書を見たとき、その内容をじっくりと見て理解し、必要な質問を丁寧に行なうのが、かえって、レストランに対する作法にかなっているという、意外な国際習慣があることを知っていただきたい。
- 食べもせぬ勘定が付いていることは、決して稀でない。このとき、断じて詰問的となってはならない。あくまで、下手に出て、丁寧に、しかし、粘り強く聞き正すのがハイ・クラスの客ということになっている。
- こちらが、ホテルの宿泊客であるとき、そのホテルのレストランでは、勘定書に、部屋番、署名を入れれば、支払いは、このホテルをたつとき、フロントで一括、行ない得るわけであるが、この勘定書の料理の下に斜線を引き、その下に、たとえば、「+15%」と書けば、それで、15%のチップも加算されて、フロントで請求を受けるということになり得る。
- 場合によると、食べた料理のうち、いくばくが、勘定書に書いてないこともある。これは、その店の経営者としての接待と理解すべきである。それなるが故に、勘定書をこちらがよく見ることをマナーとするのでもあろうか。もし、日本であれば、特別な客には、別に、上産物を持たせるのであるが、欧米の場合は、幾皿かを、ただにしてしまうというやり方をする。もし、こちらが付け落としを発見したとき、それを、こちらからの親切のつもりで言ってやれば、なにも知っていないアホウということになるし、その付け落としをやってくれた者、個人が、その店のなかで具合の悪い立場におちいることもある。で、こちらがその付け落としに気づいたときの行動の仕方が大切ということになる。欧米では、そのレストランに出ている支配人のところに行き、丁寧に、握手すればよい。日本での場合は、キャッシャーの前を通り過ぎたあと、4〜5歩行ってから支配人のほうに振り返り、目と目で挨拶をかわすことである。もし、キャッシャー前を通り過ぎたのでは、支配人との間に黙礼できなくなってしまう間取りであるならば、公然と支配人のそばまで行って黙礼することである。
ただし、この場合、勘定書が、すでに、こちらの卓に配られており、しかも、支払いはキャッシャーのところへといった場合に限る。つまり、勘定書を受け取る場所とキャッシャーの位置とに、どういう種類があるかを、日ごろ、頭で整理しておき、それぞれの場合における支配人への黙礼の場所を考えておくということになる。
- なお、海外であろうと、日本の場合であろうと、特別待遇を受けたときは、その支配人に対し、あとから、葉書などをもって礼状を出すのが、客としての道である。
- オン・テーブルで支払いを済ますときには、勘定書をよく見ることについては同じであるが、オランダなどの場合は、一律サービス料が、料理一皿ごとに加算してあるし、その他の国、ことにアメリカでは、加算してない。
そこで、客としては、ウェーターに対し「Is this tip included ?」と小声で聞くのが、作法とされている。それによって、こちらは、その勘定書にいくらを加算するかを考えることになる。
- 通常、フリー・チップは、10%がよく、それより少なくてはいけない。サービス料率も、だいたい、10%としたものである。このらちを超えてチップを払うとき、いわゆる、エキストラ・チップということになる。では、どういうとき、エキストラ・チップを払うべきであろうか。(a) 料理単価の安い品物(たとえば、ビール)を、何回となく運ばせたとき、(b) そのウェーターのサービス振りに心から感謝の念が湧いたときである。これらの場合、さらに、もう5%も置けばよい。
- 15%のチップとは言うが、いま、2,850円の食事をしたものとしよう。これを、正確に計算して、 2,850円×15%=428円 を置くものではない。
だいたい15%ということ。
では、その速算方法は?
2,850 円 × 10 % = 285 円 285 円 × 2 =約 600 円
285 円と 600 円をにらんで中間の切りのよいところということで 400 円、または
500 円。
- フリーチップの渡し方は、通常、次の5種類とされる。
(a) 釣り銭のなかからチップ分だけを残す (b) 公然と卓の上に、こちらの用意したチップ金額を置いてから立ち上がる(この場合、金を置く音がしないように) (c) 残っている食器の下に、そっと入れておく (d) ウェーターが椅子を引いてくれるとき、その指先を後ろで握り、そのまま、逆さ手で握手し、そのとき、手のなか同士で金のバトン・タッチを行なう (e) 立ち上がってから、公然と握手し、その手のなかで手渡す。
以上、こちらが年輩者となるほど、(d)、(e) についても、うまくなるのがよい。若いうちは、かりにうまくなっても、キザな感じを与えもするから、(a)、(b)、(c) の範囲にしておかれることである。また、(d)、(e) は、チップ金額が、かなり大きくなる場合に限らないと、かえって間が抜ける。
- 海外で、握手しながらチップを手渡した場合、それが、大きな金であっても支配人、ウェーターは、きわめて、形式的な握手しかせず、しばしば、ニコリともしないものである。が、こちらがレストラン出口に来て、そっと振り返ってみると、向こうのほうで、
丁寧に、会釈している。で、この振り返りを行なわないと、先方は、はなはだ、物足りず、あるいは逆に、馬鹿にされたような気持ちになる。これらも、チップを受け取る側になった場合での習慣となっているのであるから知っておかねばならない。
【型3】別室でのチップは別室で
ヨーロッパ、欧米において、メイン・ディッシュを食し、別室でデザートを食する場合、後の別室で、一緒にチップを払おうとすると、メイン・ディッシュでのウェーターに、チップを
払いそこねる。
その場、その場でチップを支払われよ。これは、ウェーターが、別室とメイン・ダイニン
グと違うことが、あるからである。