第22節 取り分け
【参考】トレーとプラッター
- 飲み物などを載せて、運んでくる「お盆」を Tray トレーという。
- これに対して、大きな Tray のようであって、その中に、じかに、魚料理、肉料理を何人分も入れて運んでくる大きな「銀盆」を Platter プラッターという。
- Tray も Platter も英語。西洋料理の道具の名前は、英語が多い。
【参考】サーバーズ・フォークなど
- ウェーターの持っているプラッターから、客が料理を自分の皿に持ってきたり、それを、ウェーターが代行したりするための大型のスプーンとフォークがある。これらを、「サーバーズ・スプーン」「サーバーズ・フォーク」という。
- 日本では、普通、「サーバー・スプーン」「サーバー・フォーク」と呼んでいるので、この本でも、そうしておこう。
【型1】魚、肉の取り分け
- プラッターを出されたとき、(1) サーバー・フォークを左にとり、(2) サーバー・スプーンを右手にとり、料理を自分の皿に移されよ。
- このとき、まず、サーバー・スプーンを料理の下に入れ、上から、サーバー・フォークで押さえて移されよ。
- しかし、魚や肉が横長のとき、左右に、ぶら下がりやすい。
そのときは、下図のような取り方をされよ。
- さて、魚のとき、その魚に、頭の付いていることがある。
これを、自分の皿に持ってきたとき、もし、頭が、右に行ってしまったならば、平気で、サーバー・スプーンとサーバー・フォークで、魚の頭が、左に行くよう、皿上で回転させられよ。
この結果、皿の上に大きく、煮汁のすじがついても、気にされるな。
- 魚でも肉でも、自分の皿では、肉塊の向こうのフチが皿の3時と9時を結ぶ線と接するようにされよ。
- そのあと、プラッターから、煮汁を取って、いま取った料理にかけるのであるが、それは、右手のスプーンで、すくうとして、そのとき、左手のフォークの先を、プラッターの上(ただし、手前のほう)に、位置させられよ。
- サーバー・スプーンとサーバー・フォークをプラッターに戻すときは、まず、右手のサーバー・スプーンを戻し、その上に、サーバー・フォークを重ねられよ。(けっして、これらを伏せられないこと。ただし、古式には、伏せたのである)
- そうして、このスプーンとフォークの柄尻が、別々に、プラッターのフチから、3cm程度、はみ出しているのが、つぎに取る人のためによい。柄尻と柄尻の間は、約5cm。
- ところで、この図のようにしようとすれば、スプーンのツボを、どうしても、プラッターに残っている料理の上に載せなければならないことを生じもしよう。
そういうときは、この約5cmといったことを忘れてしまわれてよい。
- さて、プラッターからは、客が、自分で取ることを、本則とするが、自分の着ているドレスの袖口を汚しそうであるとか、自分が、取ることに馴れない事情にあるとかいったとき、ウェーターに対して、「お願いします」と言えば、ウェーターが、代わりに、この取り分けをやってくれる。
- 左ぎっちょのときの魚の頭は、左右どちらかは、やはり、左側に魚の頭がくる。
【型2】プラッターから落としたとき
- 魚、肉などをプラッターから皿に持ってくるとき、途中で、落としたならば、あわてずに、その落としたところから、サーバー・スプーンとサーバー・フォークで取り上げ、こちらの皿に持ってきてしまう。
- それを、あと、食べることになるか、やめることになるかは、持ってきたあとで、ゆっくり考える。
- だいたい、食べられるものである。こういうとき、テーブル・クロスの効用を感じられる。また、食べたからといって、和食で、お膳の上に落としたものを食べたのと同じには考えないのが西洋料理である。
- 欧米に行って見ても、欧米人は、しょっちゅう、落とし、またそれを、拾って、食べている。
- が、やめることにするならば、そのままにしておくと、みんなの済んだとき、下げてもらえる。
- あいだに落としたものを、もとのプラッターに戻せば、そのあとの客の取る料理に対して、悪い。
- 落とした場所に、そのまま、放置すれば、料理の汁が、だんだん、テーブル・クロスに広がる。
- しかし、汁の出ない料理のとき、ウェーターが、「ここに、お載せください」とプラッターの隅を指し示してくれることもある。そのときは、そうするとして、問題は、こち
らが、いい気になって、もう1人前、料理をいただいてはならないということ。料理が
足りなくなる。
- しかし、気の効いたレストランであれば、1人前、よけいに、プラッターに載せてきている。そういうとき、ウェーターは、「どうぞ、新しいのを、お取りください」という。
- それから、いま、肉を落としたものとする。が、ガルニテュールを落としたわけでない。そういうとき、肉を断念するときも、ガルニテュールを断念しなくてよい。上品にしようと思って、ガルニテュールまで、放棄してしまうと、西洋料理の場合、かえって、
失礼とされる。
- 最後に、とにかく、落としたとき、終わりまで、あわてずに、淡々とやってのけることがいちばん、大切である。
【型3】取りすぎるな
大皿で持ってきた食べ物を、自分の皿に取るとき、はじめの方の人物は、とにかく、多く取りすぎて、終わりのほうの人物が、申しわけにしか取れなくなる。大人数の宴会とか、逆に個
人の家庭に呼ばれたときなど、キッチンにも、スペアがないので、とくに注意が要る。クリ
ームのどろっとかかった魚などは、実際に、大きく、取りたくなるのが本能であるが、制撫
されよ。
【型4】つとめて、すべて、食べよ
- 西洋料理では、ことさら、自分で、取ったものを、すべて、食べることが、作法とされている。
- そこで、取ってみて、さて、食べるとき、よほど、耐えられない味でないかぎり、また、もっと、ひどいときは、腐り物でないかぎり、食べてしまわなければならない。で、それ
だけに、まずいものかもわからないものを取るとき、量を制撫するか、取らないかすることが大切である。