第13節 正客
【型1】なんでも正客から
- 洋食には、必ず、「正客」がある。二人以上なん人でも、その中の1人が正客。いくつかのテーブルに分かれた大宴会では、メーン・テーブルの正客が、全体の正客である。とともに、個々のテーブルにも、正客がいる。
なんでも、この正客から、行動してゆく。
- しかし、正客の次にえらい人が、正客から離れて座っていても、正客の隣に座っている人から、正客に次いで、行動されよ。
- 正客は、それをしたが、そのつぎの人が、さらに、そのつぎの人が、それをやってくれないので、こちらが、それを、行ない得ないというとき、正客が行なってから、10秒も経ったならば、順番を忘れて、こちらが行われよ。
が、正客のしないうちは、我慢すること。
- 料理では、オードーブルとスープにかぎり、全員に配られたのち、正客から、食べ始められよ。
- オードーブルとスープのほかの食べ物は、デザート・コースの場合を含めて、各自の皿に、食べ物の配られたとき、各自に、ただちに、食べ始められよ。
- しかし、正客だけは、自分のつぎから三人目までに食べ物の配り終えられたのを見届けて、食べ始められよ。
- 同時サラダ法によって、肉料理と同時に、サラダ皿が出されたときは、サラダを、肉料理と並行して、食べられよ。
- 食べ終わったのち、ナイフ、フォークなどを、皿の中に納めることを、「食べ納め」と呼んでみよう。
- 各自は、自分の食べ終わったのち、「食べ納め」をされよ。
- しかし、正客だけは、一同の中で、いちばん、遅い人……これを、A氏と呼ぼう……の1人前に食べ納めをする人……これを、B氏と呼ぼう……の食べ納めから約5分間遅れて、食べ納めされよ。
- けれども、この5分以内に、A氏も食べ納めたならば、正客として、そのとき、食べ納めされよ。
- こういう問題があるから、みんなの中で、遅くなった方は、残りを急いで食べるのでなく、食べ残したまま、「食べ納め」をされよ。
【通解】
- ヨーロッパでは、しばしば、歓迎側の挨拶が、すこぶる長い。しかも、スープやティーのような冷めやすいものを、銘々に出しておきながら、えんえんと挨拶を述べたてる。この習慣も困ったものであるが、こちらも招待を受けているのであるから辛抱していなければならない。
日本人団体を海外に連れていってつらい思いをするのは、相手国の人たちと会食するのにあたり、相手国の人が、長い挨拶を述べているとテーブルの端のほうから日本人が1人、2人と食べ始めてしまうことである。日本人は、隣が食べ始めると「食べてしまえ」とばかり自分も食べ出す。そこで、次第に、その食べている人数が増えてゆく。
いかなるときも、こちら側の正客の食べ始めるまで食べてはならない。これは、国際習慣である。
- このようなケースは、日本の中で、日本人同士の場合でも、ときどき、見受けられる。端的な例として、本校学生が揃って都内のホテルにテーブル・マナー実習に出かけたような場合である。ホテルから出ておられるテーブル・マナー講師が説明しておられるとき、その講師のまわり近くの者は食べないで聞いている。
ところが、本校学生数も多い。講師から遠い所に座っている学生は、講師の話を聞きながら、さっさと食べ始めてしまう。これは、毎年の例であると言える。いったい、これが、テーブル・マナーを習いに来た者なのであるかと疑いたくなる。