第7章 飲食・喫煙 ◆第12節 テーブル・セッティング
前節 次節

第12節 テーブル・セッティング


  1. テーブルの上に、あらかじめ、置かれていた食器類のならべかたを、テーブル・セッティングと呼ぶ。
  2. 食器類は、China(陶磁器)Glass(コップ類)Silver(ナイフ・フォークやバタ・ボール)に大別される。
  3. テーブル・セッティングの型は、国によって異なり、それも、時代とともに、動いてきている。
  4. 宴会におけるフルコースの食事などの場合、グラス類は、シルバー・セッティングのとき、前もってセッティングされてある。主なグラスは、ワイン・グラス、シェリー・グラス、シャンパン・グラス、ゴブレット、タンブラーである。また、レストランでもワイン・グラス、タンブラーをセッティングしてある場合がある。が、正式のレストランにおいては、そのときのコースによってワイン・グラスがサービスされる。宴会の場合は、最初にグラスがセットされているのが正式である。
  5. さらに、その型を、省略するときのやり方にいたっては、1つの国の中でも、まちまちである。
    けれども、その国としての基本型と、それを、わざと省略し、崩した型とのあいだには、あたかも、楷書体と草書体のあいだのつながりのようなものがある。
  6. 以下に、その崩してないときの型の種類をお目にかけよう。
  1. フランス古式(1600〜1700年代)
    図48:フランス古式
     スープ・スプーン、   フィッシュ・ナイフ、フォーク、  ミート・ナイフ、フォーク
     ミート・ナイフ、フォーク、  12 料理皿、   タンブラー
     シャンパン・グラス、   赤ワイン・グラス、   白ワイン・グラス

     リキュール・グラスのないのは、これら、食後酒を、別室で飲むから。
     オードーブル・ナイフ、フォークのないのは、オードーブルを食前酒とともに、別室で食べたから。パン皿がないのは、パンを、直接、テーブルの上に置いたから。(いまでも、正式のフランス料理は、そうである)
     バタ・ボール、バタ・ナイフのないのは、バタを出さなかったから。
     いまでも、古式を尊ぶレストランでは、この形を用いている。
     しかし、現在、オードーブル、バタ、食後酒といったものを、このテーブルに出してしまうときは、それらを出すとき、そのつど、これらの食器も出している。ミート・ナイフ、フォークが2本ずつ置かれているのは、正餐のとき、肉を2回出すからで、現代での大部分の場合のように、肉を、アントレー1回で済ますときは、このミート・ナイフ、フォークも1本ずつとされる。以下、各型で同じ。
     サラダを出すとき、サラダ用ナイフ、フォークを出した。これは、以下各型でも同じ。

  2. フランス準古式(1880年ごろ〜)(セザール・リッツ式)
    図49:フランス準古式
     デザート・ナイフ、フォーク、   スープ・スプーン、   フィッシュ・ナイフ、フォーク
     ミート・ナイフ、フォーク、   ミート・ナイフ、フォーク、  12 料理皿
     ゴブレ、   タンブラー、   シャンパン・グラス
     リキュール・グラス、   赤ワイン・グラス、  白ワイン・グラス

     オードーブル用ナイフ・フォークをデザート・ナイフ、フォークと呼ぶ奇妙な習慣がある。これらが、両端に加えられている。
     リキュール・グラスが加えられているのは、食後酒を、食事中にも飲む場合を生じてきたから。
     ゴブレが加えられているのは、レモネードを食事中にも飲む人が増えたから。
     デザート用のシルバーはデザートの出るときになって、そのつど、出された。
     パン皿やバタ・ボールは、出さない。
     この型は、現在でも、はなはだ公式の宴会などでは、用いられている。
     なお、フォークを並べるとき、その先端をデコボコさせているのは、美観のためであって、このデコボコのさせかたに、きまりはない。以下の各型で同じ。

  3. イギリス準古式(1890年ごろ〜)
    図50:イギリス準古式
     デザート・ナイフ、フォーク、   スープ・スプーン、   フィッシュ・ナイフ、フォーク
     ミート・ナイフ、フォーク、   ミート・ナイフ、フォーク、   バタ・スプレッダー
    10 バタ・ボール、  11 パン皿、  12 料理皿、  13 バタ・ナイフ、 
     ゴブレ、   タンブラー、   シャンパン・グラス、 
     リキュール・グラス、   赤ワイン・グラス、   白ワイン・グラス

     イギリスでは、パン皿、バタ・ボールが出される。
     バタ・ナイフとバタ・スプレッダーが区別されている。
     デザート用シルバーは、デザートを出すとき、そのつど、出す。

  4. 英米戦前式(1930年ごろ〜)
    図51a:英米戦前式
     デザート・ナイフ、フォーク、   スープ・スプーン、   フィッシュ・ナイフ、フォーク
     ミート・ナイフ、フォーク、   ミート・ナイフ、フォーク、   アイスクリーム・スプーン
     フルーツ・ナイフ、フォーク、   コーヒー・スプーン、   バタ・スプレッダー
    10 バタ・ボール、  11 パン皿、  12 料理皿、  13 バタ・ナイフ
     ゴブレ、   タンブラー、   シャンパン・グラス
     リキュール・グラス、   赤ワイン・グラス、   白ワイン・グラス

     ここでは、とうとう、デザート用シルバーを、はじめから、並べて置くようになった。このデザート用シルバーは、手前のほうから使っていく。
     サラダ皿を、肉皿といっしょに出すとき、ウェーターが、サラダ皿を、パン皿の奥のほうに置いた。
     現代でも、日本を含め、この型を用いているレストランは、多い。

  5. 現代アメリカ式(1950年ごろ〜)
    図51b:現代アメリカ式
     デザート・ナイフ、フォーク(オードーブル用)、   スープ・スプーン
     フィッシュ・ナイフ、フォーク、   ミート・ナイフ、フォーク、   ミート・ナイフ、フォーク
     アイスクリーム・スプーン、   フルーツ・ナイフ、フォーク、    コーヒー・スプーン、 
     バタ・スプレッダー、  1O バタ・ボール、  11 パン皿、  12 料理皿、  13 バタ・ナイフ
     ゴブレ、   タンブラー、   シャンパン・グラス
     リキュール・グラス、   赤ワイン・グラス、   白ワイン・グラス

     サラダ皿を肉皿といっしょに出すとき、ウェーターが、パン皿を奥に押しやり、そのあとに、サラダ皿を置く。
     デザート用シルバーを、奥のほうから使っていくように、並べてある。
     なお、1970年ごろから、日本では、この形を、さらに、変えて、パン皿を、はじめから、奥に置いて、サラダ皿を出すとき、パン皿を動かさなくてよいようにする方式を発生している。

  6. 現代日本式(1960年ごろ〜)
    図52:現代日本式
     デザート・ナイフ、フォーク、   スープ・スプーン、   フィッシュ・ナイフ、フォーク
     ミート・ナイフ、フォーク、   フルーツ・ナイフ、フォーク、   コーヒー・スプーン
     バタ・スプレッダー、  11 パン皿、  12 料理皿、  14 サラダ皿
     ビール、ジュース・グラス、   シャンパン・グラス、   日本酒グラス
     赤ワイン・グラス、   白ワイン・グラス、 
  1. テーブル・セッティングのとき、ナイフ・フォークは3皿分以上並べないのが本則で、それで足りないほど、皿数多く料理を出すときは、あとから、皿ごとに、ナイフ・フォークを出すのである。このとき、その皿用のナイフ・フォークを、その皿を出す直前に置く。たとえば、エスカルゴ用のはさみ、かき用のフォークなどである。
  2. シルバー類の置き方を、わざと狂わせて、わかりにくくさせてあるような場合、これを、「いじわる」とか「自己流」とか批判してはならない。1つのアトラクションなのであ るから、わからなかったならば、聞いてこそ、アトラクションを行なった者に、むくいることとなる。
  3. この点、レストランで、客が聞いたとき、ウェーターが「そんなことも知らないのか」といった態度で教えたり、「さあ、どれで召し上がっても構わないでしょう」などと答えるのは、ウェーターとして、なっていない。
【型1】皿をまわすな

食事のとき、食卓のうえで、皿をまわし得るのは、ウェーターのみ。皿を、ぞんざいに置かれて、皿に焼き込まれたレストランの紋章が、ゆがんだりすることがあっても、知らぬ顔をされよ。いわんや、食べやすくするため、皿をまわされるものでない。

【説明】
  1. どうして、そういうことになったのか、わたくしは、まだ知らない。が、とにかく、このことは、きっぱりしているのである。
  2. 同時に、皿の紋章を、ゆがめて、置いていくウェーターには、困ったものである。
  3. ただし、置かれた皿の位置が手前すぎたり、奥すぎたりしたので、これを客が手でずらすことは、いっこうにさしつかえない。

ホーム 章トップ
前節 先頭行 次節