第14節 ズボン関係
【型1】折り目
ズボンの折り目を膝上30cm くらいまで、つけることは、誰でも、される。
ズボンの折り目を、前もうしろも、ズボンのいちばん上まで、きっぱりとつけるのが、本当のつけ方である。
【説明】
1911〜1912年ごろ、英国のエドワード7世が、Crease(クリース)ズボンにプリーツ(折り線)を付けてはかれるようになったのが流行となって、これが、ズボンの1つの約束となった。
【型2】折りかえしのゴミ
裾の折りかえしになっているズボンは、常に、折りかえしの中にゴミがたまっていないようにされよ。
【説明】
もともと、ズボンの裾は、シングルであった。
が、1903年ごろ、雨降りの日に、英国紳士が、結婚式場へ行くのに、ズボンの裾をよごさないため、折りまげたのを、ニューヨークの人々が写真で見て、新しい英国の流行だと思い込み、流行らせたといういきさつがある。
が、美は生まれた。
【型3】ベルト
- 正式の場で、上着を脱ぐ可能性のあるとき、ベルトの金具に、あまり、大きなものを用いられるな。
- 観光産業マンは、母校のバックルをされるな。排他的な印象を与える。
【型4】ベルトの金具の位置
ズボンのベルトの金具の端と、ズボンの股の垂直線を、一致させられよ。
【型5】ズボン吊り(suspenders)
- ズボン吊りを着用していて、人まえで、上着を脱ぐときは、上着をとるまえに、いちはやく、ズボン吊りを、はずし、上着とともに脱がれよ。
このとき、ズボン吊りだけ、先に、引っ張り出すと、もっとも、失礼となる。
- 国際習慣として、ズボン吊り姿を人に見せることは、寝間着姿を見せるのと同じと思う約束がある。
- バーテンダーが、ズボン吊り姿でサービスするのは、寝間着を着て、サービスするのと同じで、客を、思い切って、くつろがせようとする演出であり、ときに、2階に行けば、おもしろいベッド・ルームもあるという信号である。
- しかし、せまいところで働くバーテンダーとして、上着だけは脱いでいたい事情がある。
そこで、ズボン吊りをしているバーテンダーは、一般に、チョッキを着ているもの。
【型6】ズボンのびじょう
サスペンダーで、ズボンを吊る構造のズボンでは、かならず、ズボンの上端の横あたりに、ズボンを締める「びじょう」をつけられよ。
上着を脱いだとき、作法上サスペンダーも、とりはずさなければならないので、そのとき、ズボンが、落っこちないようにするためである。
【型7】ズボン吊りをかくすためのワイシャツの加工
ズボン吊りの先の金具が、ズボンの上ふちを噛む方式でなく、ズボンの上ふちの中がわについているボタンにはめられるような方式にしておき、そのズボン吊りを、ワイシャツの下に着て、ズボンの上ふちのあたりでワイシャツに孔をあけ、そこから出して、ズボンを吊るようにしていれば、ズボン吊りは、上着を脱いでも、わからない。
ことに、ズボン吊りが白ければ、ワイシャツをすけて、見えたりもしない。
ワイシャツのこの孔は、ボタンがかりしておけば、孔がやぶけてもこない。
工夫して見られよ。
【型8】ズボンのポケットに手を入れているな
- ズボンのポケットに手をつっこんだままにしていることは、和服を着て、片手を袖から抜き、帯の下に入れているよりも、もっと、不作法な所作であることを知っていただきたい。
自分のオチンチンをいじっているのと同じと思う約束がある。
日本人紳士の中には、それで、紳士としてのシナをつくっているつもりになっている方が多い。
- わたくしは、ヨーロッパのある酒席で、からかわれた。
「浮世絵で見たが日本人のアレは、だいぶん、大きいようだ。
見ているとヨーロッパに来ている日本人は、よく、ズボンのポケットに手を入れている。
いつも、ああして、いじっているから、発達するのかい」
ズボンのポケットに手を入れておられるな。
- アメリカの大統領が、よく、ズボンのポケットに片手をつっこんでおられる。
これは、あきらかに、「庶民的」であることをあらわそうとする政治家的ゼスチュアであることを知られよ。
この大統領も、すこし、改まったとき、ズボンのポケットに手をつっこんでいたりされないもの。
【型9】ズボンのさわり方
- 万一、ズボンのボタン、チャックが、しまっていないことを人前で気付いたとき、人前に向かずに、そっと、うしろを向いてしめられよ。
- 人前で、ズボンを引き上げることは、国際習慣上、「あかんべ」をしている意味を持つ。