第4章 美容と服装 ◆第10節 男子礼服の細部
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第10節 男子礼服の細部


図:Full Court Dress 【型1】Full Court Dress
  1. Full Court Dress
    直訳すれば、宮廷 (court) 正装であるが、この服装は、形から、Tail Coat と俗称され、日本語には、「燕尾服」と訳されている。
    シビル礼服としての大礼服。
    勲章を所持する者は勲章、全部佩用(はいよう)。
  2. 招待状などに、服装指定として、Most Formal、または、White tie (Cravate blanche) と書いてあるときに着用する。
  3. この服装には、細かい規定があり、それを、どこか省略して着用すると、はなはだ、失礼であるとされる。
    図:Evening Caot
  4. 同じ Full Court Dress であるが、勲章をはずし、中礼服に用いるとき、俗称として、Formal Evening Coat といい、さらに、略して、Evening Coat という。
    この中礼服としての (Formal) Evening Coat は、朝から着用してよい。

  5. 上衣
    黒の「ドスキン、カシミヤ、ウーステッド」
    襟は、剣襟で、拝絹(はいけん)を用いる。
    前身頃は、短くカットし、上着のうしろの裾を、長く垂れ下げる。
  6. チョッキ
    白の「ピケ、絹」
    シングルが普通であるが、ダブルでも、可。
    襟は、返し襟付きでも、可。
    昼間の公式謁見などには、黒のチョッキ使用。
    図:チョッキ
  7. ズボン
    上着と共地。
    側に2本のブレード(側章)を付ける。
    裾はシングル。
    白のサスペンダー着用。(ベルトは不可)
  8. シャツ
    白の「リンネル」。
    イカ胸。
    襟は、シングルの立襟で、前折。Wing Collar(ウイング・カラー)
    袖口はシングル。カフス・ボタン使用。
    図:Wing collar シングルのスタンド・カラーで前折
ドレス・シャツの別カラー着用のとき

図:カラー
前は、1 下前身頃台襟、2 上前身頃台襟、3 下前カラー、4 上前カラーの順に、4つのボタン・ホールを重ねて、前ボタンでとめる。
後ろは、後みごろ台襟、後カラーの順に、2つのボタン・ホールを重ね、後ボタンの頭を折ってとめる。
図:ボタン

シャツは、左図の点線の部分だけ布地を2重とし、カフスと同様に、糊をコチコチに付けてある。
(いわゆるイカ胸)
胸はスタットでとめる。

図:シャツ 図:スタット


  1. ネクタイ
    白の「ピケ、サテン、紗」
    蝶タイ(Bow Tie ボウ・タイ)
    図:蝶タイ

  2. アクセサリー
    白蝶貝、真珠、白台ダイヤ(金色は避ける )、プラチナ、ホワイト・ゴールド。
    シャツ胸ボタン(スタット)、カフス・ボタン、チョッキ・ボタンをそろえる。
  3. ポケット・チーフ
    白の「絹、麻」
    型として、オーソドックスなスリー・ピークがよい。
  4. ハンカチーフ
    白麻
  5. 靴下
    黒の「絹、ナイロン、テトロン」

  6. 黒のエナメル(パテント・レザー)短靴
    パンプス(無飾の黒であれば可)
    エナメル靴は、靴墨を塗らなくても光っている。
    で、このとき、ズボンに靴墨がつかないよう、エナメル靴を用いる。
  7. 手袋
    白の「バック・スキン(鹿皮)、キッド(羊皮)、絹、綿」
    手袋は、かならず、持参すること。
    で、ダンスのとき、かならず、着用し、夜の食事のとき、シルク・ハットと一緒に、クロークに預けること。
    また、皮手袋は、古くなると黄ばむので、常に、新しい白を用いなければならない。
  8. マフラー
    白絹。
  9. オーバー・コート
    黒か、ミッドナイト・ブルーの「ラシャ、カシミヤ」
    チェスターフィールド型のかくしボタン仕立て
    昔は、コートの襟にビロードを付けていたが、今は、付けない。
    (このビロードは、フランス革命のとき、イギリス貴族が、ギロチンの露と消えたフランス貴族を哀悼するためにつけたもの)
    また、インバネスが正式であった。(現在、着用している人もいる)
    寒中、屋外行列などに加わることがあるので、燕尾服用正式のオーバーを持っていないと困る。
  10. 帽子
    シルク・ハット
    図:シルクハット
    正式には、必要であるが、夜間は、クロークに預けるので必要ない。
    昔は、ビーバー・ハットと言い、ビーバーの毛皮を使ったが、その後、ビーバーの毛あしのような絹を代用したので、シルク・ハットと呼ぶようになった。
    祝儀のとき、白ネクタイ、白手袋、シルク・ハット着用。
    不祝儀のとき、左腕およびシルク・ハットに、黒紗の喪章を巻く。
  11. 時計
    普通、用いない。
    が、鎖の付いた懐中時計は用いてもよい。
    このとき、鎖は、上品なプラチナ、ホワイト・ゴールドがよい。
    フォーマルなとき、時計は、けっして、チョッキの上に付けない。
    チョッキのポケットから鎖を出し、その先の時計をズボンに入れておくこと。
【型2】Frock Coat
  1. モーニングの原型である。Frock Coat の前だけを短くしたものが Morning Coat。
    昭和初期まで着用されたが、現在、ほとんど背広になり、外国でも、一部牧師の方が、これの変形のものを用いておられる程度である。
  2. ダブル・ブレステッド(6ボタン)
  3. 膝までの長い丈。
  4. 襟は、拝絹をかけたピークド・ラベル。
  5. 胸に、ウェルト・ポケット。
  6. ウエスト・シーム。
  7. 黒白の縞ズボン。
【型3】Morning Coat 図:Morning Coat
  1. 日本では、夜の披露宴にも用いるが、間違いである。
    アメリカでは、Cutaway(カッタウエイ) と呼ぶ。
  2. 上着
    黒かグレーの「ドスキン、カシミヤ(タキシード・クロス)、ウーステッド、ラシャ」
    黒の上着、チョッキ、黒とグレーの縞ズボン、黒のシルク・ハットが正式のものである。
    グレーの上着を着用するとき、チョッキ、ズボン、シルク・ハットとも、グレーを用いる。
    これは、英国のアスコット競馬場からの流行で、現在として、園遊会などに用いてよい。
  3. チョッキ
    上着と共色。
    シングル、ダブルの両方、可。
    白、グレーのチョッキは、結婚式、祝典に用いられる。
    たとえば、黒の上着、白チョッキ、シェパード・チェックのズボン、また、黒の上着、グレーのチョッキ、シェパード・チェックのズボン。
  4. ズボン
    黒とグレーの縞柄、細かいシェパード・チェック(千鳥格子)。
    裾はシングル。
    白のサスペンダー着用。(ベルト不可)
    縞柄は、祝儀のとき、太めの派手なものでもよいが、不祝儀のとき、細めのものがよい。
  5. ワイシャツ
    襟なしシャツ。別カラーをつける。前立、可。
    または、立襟前折り(ウイング・カラー)
    折襟カラー付きでも、可。
    袖口はダブル。カフス・ボタン使用。
    昔は、イカ胸シャツも用いたが、硬くて、不便なので、だんだん、普通シャツになった。
  6. ネクタイ
    折襟のとき、巾タイ。
    立襟のとき、巾タイ、ボウ・タイの両方、可。
    アスコット競馬場出席のとき、グレーのモーニングを着用し、アスコット・タイを用いる。
    公式園遊会のとき、グレーのモーニングを着用の場合、アスコット・タイを用いることができる。
    また、結婚式の花婿のとき、グレーのモーニングを着用の場合、アスコット・タイを用いるならば、その色は、白である。
    巾タイのとき、soft collar (折り襟)、可。
    図:ネクタイ
  1. アクセサリー
    プラチナ、ホワイト・ゴールドなど、メタリックなもの。
    カフス・ボタン、タイ・ピンをそろえるとよい。
  2. 手袋
    クリーム色かグレーの「キッド、鹿皮」。
    スエード皮でないときは、同じく、「絹、トリコット、綿」。
    すべて、内縫のもの。
    黒は用いない。
    正式には、白でないが、日本において、主に、白を用いる。
    たとえば、賞状などを手渡すとき、白手袋をはめたまま行なうし、また、結婚式において、花婿は、白手袋を持つ。
    米国において、白皮手袋を用いる。
  3. ポケット・チーフ
    白の「絹、麻」。シルバー・グレー。(ネクタイと合わせる )
  4. ハンカチーフ
    白麻。

  5. 黒短靴。(不祝儀のとき、エナメル不可)
  6. 靴下
    黒系統のもの。
  7. 帽子
    山高帽
    黒のシルク・ハット(正式) グレーのシルク・ハット、山高帽子、ホンブルク、中折れ帽子。
    帽子は、屋内のとき、不要である。
    着帽のとき、黒のシルク・ハットが正式であるが、英国で、アスコット競馬場のときに用いられたグレーのモーニングに合わせて、園遊会など、グレーのシルク・ハットを用いる。
    また、英国競馬ダービーには、黒の山高帽子(俗称 ダービー・ハット)を用いる。
    これは、乗馬服のとき、現在でも用いられている。
帽子

【型4】Dinner Jacket
  1. これは、元来、1700年代に、イギリスで、家庭の夕食のときの服装として用いていて、Dinner Jacket または、Dinner Coat と呼んだ。
    1800年代当初、これらが、ニューヨークの Tuxedo 湖に浮かぶ船上レストラン Tuxedo Club で、燕尾服の代用として、用いられた。
    つまり、それまで、レストラン客も、レストラン・ウェーターも燕尾服着用がきまりであったものを、もっと、くつろごうということで、ここのウェーター服を、この Dinner Coat に改めて、客にも、それをすすめたわけである。
    で、こん日一般には、Tuxedo タキシードと呼ばれている。
    それから、欧米でのレストランのウェーターの服装、ついで、客の服装として広まり、ついには、簡略な宴会にも使われるようになっている。
  2. また、この服装は、イギリス、フランスで、Smoking スモーキングと呼ばれている。
  3. また、Evening Coat のかわりに用いるので、After Five (午後5時以降に着る)という呼び方もある。
  4. 日本では、Morning Coat より、Dinner Jacket のほうが、あとで、一般化したため、これを Morning Coat より、改まったもののように思っている人があるが、逆である。

    図:Dinner Jacket

  5. Dinner Jacket は、招待状に、Black tie または Cravate noire と書いてあるときに着用する。
  6. 上着
    黒かミッドナイト・ブルーの「カシミヤ、ドスキン、ウーステッド、タキシード・クロス」
    上記の無地が、正式タキシード。
    襟は、剣襟(ピークド・ラベル)、へちま襟(ショール・カラー)で、拝絹を用いる。
    シングル、ダブルの両方、可。
  7. チョッキ
    イブニング・コートのチョッキに準ずる。
    ダブルのとき、チョッキ不要。
    シングルのとき、チョッキを用いない場合は、カマー・バンドを着用。
    白チョッキを用いるときは、立ち襟で前折(ウイング・カラー)とする。
    ダブルのとき、チョッキ、カマー・バンドを用いなくてよく、よって、上着のボタンは、はずさないのが原則である。
    シングルのとき、ボタンをかけていても、チョッキを着用していないと、ワイシャツが見えるので、カマー・バンドを用いる。
  8. カマー・バンド
    図:カマー・バンド
    黒が正式。
    チョッキを略すときに用いる。
    「cummer・bund」は「kummer・bund」とも綴る。
    cummer とは、スコットランド語で「女の話し相手」
    腰にまいていた帯が、「cummer・bund」である。
    要するに、グルグル巻きにした帯である。
    こん日、「cummer・bund」とは、タキシードの下に着る、腹帯をいう。
    変わり色のカマー・バンドを用いるときは、それと合わせたボウ・タイを用いるのがよい。
    腹巻き状、サッシュ・ベルト。
    ベストの役割をはたす。
    タキシードの襟に着ける拝絹と共布で、ヒダが付いている。
    (ヒダの数は、きまっていない)
    ボウ・タイと合わせるのがよい。
  9. ズボン
    上着と共地。
    脇に1本のブレード(側章)をつける。
    裾はシングル。
    白のサスペンダー着用。(ベルト不可)
  10. シャツ
    ドレス・シャツ着用。
    ヒダ胸またはピケ地。
    フロント・フリル、プリーツなどのデザイン、可。
    襟は、立ち襟、カラー付き折り襟。
    図:シャツ
  11. ネクタイ
    黒の「サテン、アゼ地」
    カマー・バンドと共地。
    ボウ・タイ、クロス・オーバー・タイ。(白のボウ・タイ不可)
  12. アクセサリー
    黒オニキス(正式)、真珠、黒蝶貝、ガーネット、サファイア。
    カフス・ボタンと、胸ボタン(スタット)とセットのものがよい。
    テール・コートの付属品でもよいが、それほど、厳格でない。
  13. 手袋
    白、グレー。ダンスのときは必ず着用。
  14. 靴下
    黒の「絹、ナイロン、テトロン」
    黒色の刺しゅう、可。

  15. イブニング・コートと同じ。
  16. ポケット・チーフ
    白の「絹、麻」
  17. ハンカチーフ
    同上
  18. マフラー
    白絹
    その他、イブニング・コートに準ずる。
  19. オーバー・コート
    黒、濃紺、スポーティでない黒っぽいもの。
    チェスターフィールド、かくしボタン。
    コートは、客の前で着用しないで、クロークに預けるため、少々、略してもよい。
  20. 帽子
    シルク・ハット、ホンブルク。
    無帽、可。(屋内のとき)
    夜の行事は、屋外のことが少なくないし、また、往復の間、コート着用とともに、帽子をかぶるので、コートに合わせたものを用いる。
    会場では、クロークに預けること。
【参考】Fancy Tuxedo
  1. 白色、その他色がわりの Tuxedo を総称して、Fancy Tuxedo という。
  2. 白色の Tuxedo は、東南アジア諸国など、いくばくの国での場合を除き、中礼服として認められない。
    ショーマンとバンドマンが演出上、Fancy Tuxedo を採用している場合があって、日本では、都市ホテルまでが、これを採用したりしているが、かなり、哲学的な決心を要する。
  3. さらに、日本では、1975年ごろから、結婚披露宴で、新婦の「お色なおし」のとき、新郎が、白色タキシードに着替えて、あらわれるという形を造り出しているが、これも、業者考案のチンドン屋演出である。
【型5】Directors Suit
  1. 儀礼上、昼の準中礼服。
    もっとも、用途の広いセミ・フォーマル・ウェアである。
    黒の上着に、モーニングと同様の縞柄のズボンを着用する。
    モーニングと平常服の中間服装。
    かつて、忙しくて、行事の多い外交関係の人々が、公的な訪問、会議、午餐会、茶会など、昼間の行事に用いていた。
    現代として、中年以降の人にしか見られない。
    サック・コートまたはセミ・フォーマル・ジャケットとも呼ぶ。
  2. 上着
    黒の「ラシャ、タキシード・クロス、ウーステッド(ドスキン、カシミヤ)」 など。
    シングル、ダブルの両方、可。
  3. チョッキ
    上着と共地。
    以下、モーニングと同様。
  4. ズボン
    黒とグレーの縞柄コール地(モーニング用)、あるいは、モーニングのズボンを用いてよい。
  5. 帽子
    黒の「ホンブルク、ソフト(中折れ)」。
【参考】

エドワード7世陛下が展覧会のオープニングに出席のとき、フロック・コートでは、大げさすぎるとして、黒の上着に、縞ズボンという折衷案になさったのが、このディレクターズ・スーツの始まりである。
これは、朝から夜まで用い、仕事のかたわら、行事に参加することもできるので、戦前は、愛用された。

【型6】Black Suit
  1. 昼夜兼用の小礼服。
  2. 上着
    黒か濃紺の「ラシャ、カシミヤ、ドスキン、ウーステッド、絹、モヘヤ」

     《ナチュラル・モデル1
    1. ピークド.ラベル、シングル・ブレステッド、1つボタン、チョッキ、ズボン
    2. ピークド.ラベル、シングル.ブレステッド、2つボタン、チョッキ、ズボン
    3. ピークド・ラベル、ダブル・ブレステッド、4つボタン、ズボン
    4. ピークド・ラベル、ダブル・ブレステッド、6つボタン、ズボン
    図:Black Suit

     《ナチュラル・モデル2》
    1. ノッチド・ラベル、シングル・ブレステッド、1つボタン、チョッキ、ズボン
    2. ノッチド・ラベル、シングル・ブレステッド、2つボタン、チョッキ、ズボン
    3. ノッチド・ラベル、シングル・ブレステッド、3つボタン、チョッキ、ズボン
    図:Black Suit 2

    襟は、流行にもよるが、襟巾は、レギュラーがよい。(変わり襟、ステッチ、不可)
    流行に左右された襟巾の大小は、流行が去ったときに用いることができなくなる。
    で、礼服類の布地は、上等なものが多いため、レギュラーとしておくと、長く着用することができる。
    夏冬兼用にするために、薄地の三つ揃いとし、裏を背抜きするとよい。

    図:襟
    図:襟
     《肩線
    図:型パッド
    ナチュラル・ショルダー・ラインがよい。
    大きなパッドを入れ、肩をいからせたミリタリー・スタイルの流行したときもあったが、このパッドは、体形を補正する程度にしておくこと。
    (なで肩の人は、背中に横シワができやすいので、パッドを少し入れるとよい)
     《前上着線》 前身頃から裾にかけての線
     (フロント・カット)
    1. スクエア・カット
      平らな線。ダブルのみ。
    2. ラウンデット・カット
      自然に丸くなっている線。ごく普通のもの。
    3. カッタウエイ
      大きく脇線まで、カット。スポーティ。
    図:前上着線

     《ポケット
    1. 胸ポケット
      図:ウェルト・ポケット
    2. 腰ポケット
      図:腰ポケット1
      図:腰ポケット2

      フラップ付き、ジェッテッド・ポケットは、改まったとき、フラップをポケットの中に入れたほうがよいという考え方がある。(本来、フラップの目的は、雨ぶた。タキシード、モーニングコートなどのポケットにふたは付いていない。)
      図:パッチド・ポケット
     《馬乗り

    ベントは、乗馬服や運動服など、激しい動きをするために、採用されたものである。
    スポーティな服やオフィス着に付けるとよい。
    普通、ベントのことを、ベンツと呼ぶ。

    図:ベント

    上着が、シングル1つボタンのとき、三つ揃いとするのが正式である。
    上着のボタンは、チョッキを着用しているとき、はずしていてよい。
    が、チョッキを着用していないとき、着座していないかぎり、かならず、はめていること。
    上着がシングル2つボタンのとき、上の1つをはめていればよい。

  1. チョッキ
    ダブルのとき、不要。
    祝事のとき、グレー、白を用いてよい。
    英国において、チョッキを着用していないのは、はなはだ、失礼ということになっており、婦人の前では、とくに、この注意が要る。
    アメリカにおいて、チョッキを着用しないのが流行したが、近年、また、リバイバルしている。
    で、チョッキのボタンは、本来、すべて、はめているのが正式であるが、仕事中など、下の1つだけはずしてもよいことになっている。
    また、時計を用いるとき、チョッキのボタンの穴に、時計の鎖どめを掛けないこと。
    かならず、チョッキのポケットの中へ掛けること。(時計の金鎖、不可)
    くれぐれも、チョッキとズボンのあいだから、シャツが見えないよう注意すること。
  2. ズボン
     《シルエット
    1. 普通型
      流行によって細くなったり、太くなったりするが、あまり、変化はない。
    2. テーパード
      裾口に向かって、先細りになっている。(これより、さらに細くなったものが、ス リム・スラックス)
    3. パイプド・ステム
      煙突のように、上から下まで、同じ太さのもの。
    4. ベルボトム(パンタロン)
      膝まで、ぴったりしており、膝から下が Bell のように広がっているもの。
      (ヒップの下から広がったものは、セーラー・パンツ)
    5. オックスフォード・バックス
      極端に、太いシルエット。(バギー・パンツともいう)
    図:ズボン
     《
    1. ターンナップ(ダブル)
      裾口を長く折り曲げて、ダブルにしてあるもの。
    2. カフレス(シングル)
      シングルのほうが、ダブルよりも正式。
      (昔は、裾は、ただ折り曲げただけのもの であった)
    3. モーニング・カット
      前を短く、後ろを長く仕立てたもの。
      (靴にかかるのを防ぐため)
    4. カット・オフ
      裾口を切り離したままにしているもの。
      ジーンズなど。
    5. レース・アップ
      作業用として、紐でしばっていたのが、のちに、1つの飾りとなったもの。
    図:裾
     《
    1. レギュラー
      ウエストにベルトを締めるとき、もっとも、身体に合った位置。
    2. ハイ・ライザー
      股上が深い。
      チョッキを用いないとき、ベルトの上で、ズボンがあまるので、よくない。
      (サスペンダーを用いるためには、よい)
    3. ヒップ・ハンガー
      腰骨のところに、ベルトがかかり、股上が浅い。(若向き)
    図:ズボンの腰
     《腰のプリーツ
    図:腰のプリーツ
    1. ノー・タック
      タックなし。
      若者向き。
    2. ワン・タック
      ズボンの折り目の延長に、1つヒダをつける。
    3. ツゥ・タックス(外倒し)
      ズボンの折り目の延長に、外向きにヒダを付ける。
      さらに、脇線の延長に、もう1本ヒダを付ける。
    4. ツゥ・タックス(内倒し)
      c と同じものであるが、ヒダを内向け(中央向け)としたもの。
      (腹の出た人は、このほうが、体形をカバーできる)
     《うしろポケット
    図:うしろポケット
     《脇ポケット
    1. バーティカル・スリット・ポケット
      脇経線利用したもの。
    2. ホワード・セット・ポケット
      脇よりななめ前にポケット口を寄せたもの。
    3. ホリゾンタル・スリット・ポケット
      前脇を横にカットしたもの。
    図:62b
     《ウォッチ・ポケット

    ベルト布と前ズボンの縫目に、時計が入るだけ、口をあけたポケット。
    時計の鎖をベルトに通して、ズボンのポケットに入れる。

    図:ウォッチ・ポケット
  3. ベルト
    黒の皮
    巾2.5〜3cm程度。
    バックルは、共皮でくるんだもの。また、金具のおとなしいもの。
    (黒皮のとき、金の金具、不可)
    このほか、カジュアル用として、ウェスタン・ベルト、シンチ・ベルト、ワイド・ベルト、ナロー・ベルトなどがあるが、フォーマル用として、けっして、用いないこと。
【型7】ブラック・スーツ以外の Dark Suit
  1. 一般の背広であるが、全体に、黒っぽく見えて、地味なもの。
    ブラック・スーツに準じて、さらに、略したもの。
    ビジネス・スーツとして着用しながら、冠婚葬祭、会合などにも用いることのできる、最低限度のもの。
    不祝儀のとき、喪章を用いる。
  2. 色として、黒、濃紺、チャコール・グレー、グレー、ダーク・グレー、こげ茶など。
    また、布地として、「カシミヤ、ドスキン、ウーステッド、シャークスキン」。(ツイードでないもの)
    柄として、しもふり、縞柄(ただし、近づいて見なければ分からない程度のもの)、織り柄、地紋柄。
    上下共地とし、また、チョッキも共地で仕立てる。

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