第4節 自動車作法
【型1】自動車の座席(儀礼用自動車の場合)
座席の上下は、車の後方席の右席が、第1席。後方席の左の窓ぎわが第2席。後方席の中央が、第3席。前席の右席が第4席。前席の左席が、第5席となる。
乘車するとき、原則として、この順序を守られよ。
【型2】自動車の座席(個人自動車の場合)
- 座席の上下は、車の後方席の右席が、第1席であり、後方席の左の窓ぎわが、第2席、後方席の中央が、第3席、助手席が、第4席となる。
乗車するとき、原則として、この順序を守られよ。
- また、降りるときは、a. 運転者、b. 助手席、c. 後方席の左窓ぎわ、d. 後方席のまん中、e. 後方席の右窓ぎわ順で降りられよ。
- 狭い車の場合、3番めに、まん中に座るのは窮屈である。
したがって、3番めに乗るべき人は、「お先に」と言って、最初に右窓ぎわに乗った人のすぐあとに、まん中に乗ってしまわれよ。
- えらい順とは、「貴女目婚年訪」の順。
貴は、王候・高官・聖職者。女は女子。目は目上。婚は既婚者。年は年上。訪は訪間者。
- たとえば、男女数人が、乗車する場合、女子の年長者が、第1席に乗り、「女目婚年訪」の順で、最後に、男子が、空席か、補助席に座ることになる。
- 運転者が目上の人であってもそのときは、運転者としての行動をとられよ。
【型3】降車の仕方・乗車の仕方
- まず、女子が、先に、男子があとに乗る。
男子が、降りて、女子があとから降りる。
これは、馬車時代の原則であった。
- バスや電車のように乗り降りに頭をぶつけるような心配のないときは、足から乗られよ。
タクシーや乗用車のように頭をぶつけそうなときには、お尻から乗られよ。
降りるときは、足から先に降りられよ。
【参考】
乗降の方法を国別に示す。
- イギリス、日本では、前述の方法をとる。
- アメリカでは(アメリカ公式令)
- 右側通行の場合
乗るとき 上位者があと
降りるとき 上位者が先
- 左側通行の場合
乗るとき 上位者が先
降りるとき 上位者が先
- フランスでは(フランス公式令)
- 右側通行の場合
乗るとき 上位者が先
下位者は、自動車の後方を廻わって、反対側入口から乗車。
降りるとき 上位者が先
- 左側通行の場合
乗るとき 上位者が先
降りるとき 上位者が先
- 車のドアはいきおいよく「バタン!」と閉めてはいけない。
ドアの閉まる10cm のぐらい手前まで左手でドアをゆっくり運び、そこからグッと力を入れて閉める。
トランク・ルームのドアも同様である。
【型4】ホスト、ホステスの作法
- ホスト、ホステスは、前の席(運転席、助手席)に座られよ。
- 子供がいるときは、後座席の客のあいだ(中央)に座らせられよ。
- 最後に、運転者が乗られよ。そのとき、安全確認を行なわれること、しかし、車の前を歩かれないように。
- 運転者、または、ホスト、ホステスは、乗るとき、客より後に、降りるとき、客より先に、行動されよ。
- 車のドアを外から開けられるとき、ドアの蝶番が左側(したがって取っ手が右側)のとき、取っ手を右手で持ってドアを開けられよ。
そうすることによって、車の中の人の足元をのぞき込むようにならなくなる。
ドアの蝶番が、右側のときは、以上を反対にする。
車の中の客が降りられたのち、ドアの取っ手を持つ手を持ちかえ、車の中の落とし物の有無を確認されよ。
- お客の荷物を持つ場合
右手に荷物を持ち、左手でドアをあける。
【型5】運転台への乗車
- 運転席と客席との間にガラス戸のある場合については、考えられずともよい。
- ホスト、ホステスが運転するとき、客は、すすんで、助手席に乗ろうとされよ。
- 主人が、運転するとき、主人の隣席(運転席)が上位となる。
【型6】車中での作法
- 自動車の中で、灰皿がないとき、けっして、タバコを吸われるな。
また、灰皿があったとしても、他の人に「May I smoke?」と聞いてから吸われよ。
また、灰を車外に捨てられるな。
- クーラー、エアコンを使用している場合、タバコを吸うとき、「タバコを吸ってもよろしいですか?」と一言、いわれよ。
- 車の中で、タバコを吸われるとき、自分の携帯用の灰皿を使用されよ。
もし、持っていなかったならば、車中の灰皿を使用されることとなるが、そのとき、後部中央に座られたならば、正面に灰皿のないとき、自分の左側の灰皿を使用されよ。
- 自動車のなかで、いねむりをされるな。これをするのは、日本人のみである。
自動車に乗っているあいだ、安全のため、運転手の指示に従われよ。
- 陽気に、騒がれるな。
- 紙切れを、車から路上に捨てられるな。
【型7】女子
- 女子は、丁重に、保護されていることを「当然のこと」と思われるな。
常に、感謝の気持を表現することが、大切である。
- 自動車の乗り降りの際、高齢であるが、特殊な状態にある場合のほか、男子の手を借りることは、控えられよ。
- 上下の区別
上下の区別というものは、明治・大正時代においては、日本のほうがしっかりしていたが、現在、欧米のほうがしっかりしている。
これは、日本において四民平等というものが、急激に普及しすぎたためと思われる。
【型8】自動車での訪問
- 約束の時刻の15分前に、先方の家の前に車を持って行かれよ。
そののち、車の中から先方の表札を確かめたならば、そのまま、通りすぎられよ。
車を1まわりさせ、その家の前には、約束の時刻の1分前に到着しておられよ。
- ホスト、ホステスは、客が運転している車が、バックするときなど、誘導されよ。
- ドアの開閉の際、ドタンという大きな音をさせられるな。
- 車の前は、けっして、横切らないように。
これも、馬車作法から来ている。つまり、前を横切ると、馬に噛まれる心配があった。
【型9】下車立札
- こちらが、車を運転して、スタートしようとしたとき、こちらより目上の方が、車の外からあいさつ、されたものとする。
- こちらが、車を運転して、スタートしてから、バックや方向転換を行なって、いよいよ、本格的に走り出そうとするにあたり、一旦、停止することがある。そのとき、こちらより目上の方が、まだ、むこうで、見送っておられるものとする。
- こちらが、車を運転して到着し、サイド・フレーキを引いたとき、もう、そこに、こちらより目上の方が出迎えておられるものとする。
- こちらが、車を運転しており、ふと、停めたとき、車のそとに、こちらより目上の方が立っておられ、むこうから会釈や、あいさつをされたものとする。
- こういったとき、運転経験5万kmを超えている方に限り、つぎのことを心掛けられよ。
- 前後左右を見、自分が、いま、車の外に出て、あいさつしても、安全であり、かつ、他の車の通行を妨げることにならないか。
- それで、もし、大丈夫ということになったならば、運転席のドアをあけ、車の外に立ち、そのあけているドアを手で押さえたまま、相手の方に、短かいあいさつをされよ。
- こちらが、車で去るとき、こういった、いわば、「下車立礼」を行なったのち、車の方向転換をし、さて、本格的に走り出そうとするとき、まだ、目上の方が見送っておられることがある。
そこで、こちらも、もういちど、「下車立礼」をすれば、はなはだ、念入りであるが、オーバーである。
こういうとき、2度目を「下車立礼」とせず、その見送っている方とのあいだの車の窓をあけ、会釈されるのがよく、その会釈が、相手に見えないと思うときは、「失礼いたします」といった声をかけられるのがよい。
- もし、さいしょの「下車立礼」を行なうところで、車中からの会釈とか声掛けとかを行なっておき、車の方向転換を済ませてから、「下車立礼」を行なえば、間が抜けることがある。(間の抜けないこともある)
【型10】タクシー作法
- タクシーの席順は、個人自動車の場合と同じで、下図のようにする。
- 運転手に対する指示は、女子がするもの。
【型11】列車作法
現在、日本の鉄道は、食堂車をビュッフェと呼んでいるが、カフェ・テリアが正しい。
この間違いは、イギリスの鉄道の間違いを、そのまま受け入れたためにおこっている。
第8章