第1節 ヨコ書きの手紙
- ここでは、ヨコ書きの手紙の書き方を述べる。
- 手紙の書き方は、論文と、ほとんど同じである。
- 「6つのHOOK*」のうち、宛名の書き方*については、すでに述べた。
- 発信日付は、宛名より1行上に持っていかれるとよい。
これが、当今の国際習慣のようである。
- 発信者名を、本文より、あとに置く流儀は私信の場合。
業務用のときは、論文での発信者名のところに書かれればよい。
- 表題は、業務用の手紙のときだけ、付けることがある。
- 本文のはじめには、「拝啓」とか「謹啓」とか書くことが日本では残っている。
- 「以上」の文字にあたるところには、敬具といった文字を入れるのが、日本のしきたりである。
- ページ番も、論文と同じ。
- さて、発信者名のところに、発信者の番地も書いておけば、相手は、封筒を捨てることができて、ファイルしやすい。
- 当今として、発信者の郵便番号を付記しておくことは、作法のなかに含まれる。
日本も、昭和40年ごろからであったか、ようやく、郵便番号制を敷くようになった。
これによって、郵便コストが、著しく、軽減されるわけであり、その機械化は、こんご、いっそう、進んでゆく。
そこで、発信者が受信者の郵便番号を記入しなければ、手紙が、なん日も遅く着くように、変わってきている。
そうなると、相手の郵便番号を記入しないで発信することが、はなはだ、失礼な行為となってくる。
そこで、先方が、こちらに手紙やはがきを書くとき、こちらの郵便番号をいちいち、郵便番号簿で調べなくとも済むように、こちらが、こちらの郵便番号を付記して、発信するという作法が生まれてくる。
この点を踏まえられよ。
- 「拝啓」と書くとき、「拝」と「啓」のあいだを、離す人は少い。
ところが、敬具では、どういうものか、大部分の人が、「敬」と「具」のあいだを離す。
これを離さずに書かれよ。
- 「拝啓」と書いて、同じ行に文面を書きはじめるのであるから、文面のおわった行の右端に、「敬具」を書けばよい。
文面のおわりが、右端に到ったとき、はじめて、次行右端に「敬具」を書かれよ。
- はがき文では、「拝啓」のかわりに、「前略」、「敬具」のかわりに、「匆々(草々 )」または、「不一」を書くことが行なわれてきているが、わたくしなどは、はがきでも、「拝啓」「敬具」で押し切っている。
そのかわり、文面のはじめに書く、あいさつ文を省略するときは、はがきのばあいに限り、「前略」も用いているし、同じく、おわりのあいさつも省略するときに、「匆々」とか「不一」を用いている。
- 自分の名前は、そのおわりと、文面の行末を一致させるべきもの。
ただ、自分の名前の下に、印かんを押す必要のある手紙では、印かんのスペースだけ、名前をずらすのがよい。
- それも、印かんの長径が、1cm以上であるならば、自分の名前と2〜3mmは重なるようにするのが本則で、その印かんのおわりは、やはり、文面の行末と一致するのがよい。
- 発信時をあらわすのに、なるべく、年から入れたほうが、相手が、その手紙を保存しておき、後年、見るときに、たすかることになる。
- よく、うっかりと、発信時のさいごに、テンを打ってしまうものであるが、これは失礼となる。
「そら、どっこいしょ。つぎは、相手の名前だ」という気分に受けとられる。
- 相手の名前が、肩書きを込めて、2行になることがある。
そのときは、その第1行と第2行を、同じ高さにすることである。
- 便箋の紙面の都合で、文面の末尾で、紙をかえなければならないことがある。
このとき、 文面と敬具のあいだで紙をかえないのが、げんみつな作法とされている。
相手に与える微妙な心理効果を考えて、そうなっているとも言えるが、ここは、そうしないことについての正当付けもできるので、わたくしは、この「しきたり」を重要視していない。
- 女子の発信する手紙では、「拝啓」と書かず、そのかわり、「一筆奉ります」などと書く。
「敬具」のところは、「かしこ」である。
相手の名前のあとに「御許(おんもと)に」などと書く。
ほかは、ことごとく、男子と同じ。
- 便箋の折りたたみかたは、下図の形がよい。
こうすると、相手が、読むのに、持ちやすい。
- ただし、ヨーロッパ人に手紙を出すとき、この4折りでは、どういうものか、縁起がわるいとされるので、かならず、3つ折りにされること。
3つ折りのときは、下図のように折られよ。
また、これを、封筒に入れるとき、封筒のうらに向けて入れられよ。
- 日本では、封筒にいれるときは、拝啓の文字が、封筒の表面に、いちばん、近くなるよう、また、この文字が、封筒の上のほうにゆくように入れる。
- 死亡通知とか、切腹申しつける命令のときだけ、文面の書きはじめが、封筒の底にゆくように入れるので、これを「逆さ封筒」と呼び、現代でも、そうならないように注意している個人や会社が多い。知っておかれること。
- 封筒の表書きは、まがりやすい。
相手のところ番地や名前を書くとき、封筒のうえに、定規を置いて、この定規のフチから2〜3cm離して、定規と平行に字を書いてゆくと、大過なきを得る。
- 手紙やはがきでの最大の失礼は、相手の名前をまちがえたり、うそ字を書いたりすることである。
相手の役職名をまちがえるものも、すこぶる、まずい。
わたくしの名前は、林實であるが、年賀状をこめて、年間2,000通前後、受けるとして、そのうち、10通ばかりは、林寛とされている。
- それから、いかに、急ぐときも、宛名を、乱筆で書くものではない。
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