第8節 レストランヘの入場
【型1】レストランに入るとき、クロークの有無を確かめよ
レストランに荷物を持って入られたとき、まず、クローク・ルームの有無を確かめられよ。クローク・ルームのないとき、はじめて、荷物一切を、テーブルのところに持って行かれよ。
ただし、クローク・テーブルがあっても、男女とも、ハンドバッグ、新聞、雑誌、図書などは、テーブルまで、持って行かれてよい。
【型2】レストランに入っていくとき、女子を先に
- レストランに入ってゆくとき、男子は、自分のそばに女子がいれば、女子を先にする。
- 男子がうしろといっても、女子の左うしろということ。前後距離は、1.5m未満。
- もし、この同伴2名が、前とのあいだにつかえたとき、この2名は、男女同行か、男子が1歩前に出るかして、待機されよ。
- レストランを出て行くときも、女子を先にすること。ただし、出て行くときは、そのときの自然な具合のほうを大切に考えられよ。
【型3】レストラン入場は、タテ1列、3m間隔
- 同性2名、または、性別のいかんを問わず3名以上で入場するとき、タテ1列となり、前の人とのあいだを約3mあけて、歩いて行かれよ。ただし、夫婦の場合は例外であって、一緒に入場してよい。
- 3m前を歩いている人が、立ちどまったとき、こちらは、3mあけたまま、そろっと、立ちどまり、手前下にして、平気で、立っておられよ。
- ガツンと立ちどまると、空気が動揺する。
- キョロキョロ、まわりを見まわしたり、うしろを振り向いたり、顔をしかめたり、ニヤニヤしたりすると、それぞれ、奇妙な雰囲気をつくり出してしまう。
- この行列が動き出すときも、そうっと動き出されよ。サッと動き出されると、空気が動揺する。
- さて、このようにしようと思っても、不作法な連中がやって来て、ゴチャゴチャにしてしまうこともある。そのときは、こちらも、ゴチャゴチャになられてよい。しかし、このケダモノたちとの競争を、起こされないように。ここで、競争すれば、どちらも、ケダモノとなる。心の中に、「世界秩序、世界秩序」と念じられよ。人間として、競争すべき場は、ほかにある。
- 上役下役の男女、また、その逆の立場
どちらの場合も、男性が3m間隔を保ち、後に立ち、ドアマンがいないときは、やはり男性がドアを開ける。
- レストラン入場の際の一時停止は、前の人とのあいだを3mあけて止まるが、ホテルのフロントの前、学校の教務課の前では、1m間隔で止まる。しかし、駅の出札口の前、空港のカウンターの前などでは、1m以内とする。
【説明】
- タテ1列の行列には、2種類ある。
- 儀礼行列
- 一般行列
- 「儀礼行列」とは、教会内、儀式場、レストラン内での行列であって、移動するときも、停止したときも、前後距離、約3mを保つもの。
- 「一般行列」とは、切符を買うとき、配給物をもらうとき、
運動会での出場を待つときなどでの行列であって、移動するときは、前後距離、約1m、
停止したとき、1m以内とするもの。
【型4】レストランでの歩き方
- レストランに入って行くときと、出てくるときの歩き方を、もっとも、美しくされよ。けっして、足音をさせず、はや足にもならないように。ここは、いかに、くだけた場所でも儀式的に。「メシをクウだけのことにナンデエ」といった気持ちを持たれぬように。
- ただし、そこで、音楽などが鳴っていようとも、このリズムに合わせて、歩かれることをされるな。
【型5】すでに入っている人をジロジロ見ないこと
- レストランに入って行くとき、すでに、着席している人を、ジロジロ見ないこと。
- また、着席している人の中に、知人を見付けても、こちらは、歩いたまま、会釈にとどめられよ。
【型6】レストランに入って、勝手に席を探すな
ホテルのレストランにせよ、独立のレストランにせよ、「マネジャー指示席制度」のところと、「自由席制度」のところがある。
概して、高料金のレストランが、「マネジャー指示席制度」を採っているが、厳密に、そうとも申せない。
【説明】
- 日本人は、こういう仕組みを知らずに、レストランに入るや、さっさと、自分で席を探して座ってしまう。で、ひどい場合、立たされる。
- わたくしも、西ドイツのドライブ・イン・レストランで、そういう目にあった。ドライブ・インであるからと、入っていって、空いているイスに座ろうとした。
ところが、そこのウェートレスが来て、いきなり、わたくしに、「立て」という。こちらが立ち上がって、ポカンとしていると、マネジャーが来た。で、「どうぞ、こちらへ」と別のテーブルに案内してくれた。
わたくしは、なぜ、あのウェートレスに、どなられたのか、分からなかった。はじめ、「アイツは日本人嫌いなのか」と思った。が、しばらく見ていてわかった。テーブルのいくつかずつをウェートレスが分け持っていて、そこからあがるチップは、それぞれのウェートレスの収入となっている。
で、マネジャーは、客を、各ウェートレスに、ほぼ、均等に、分配していたということ。
それを知らない、わたくしは、その店に入って、自然に足の進んでいったテーブルに腰かけた。すると、そのウェートレスの収入のみが多くなる。で、そのウェートレスは、他の仲間への分配を気にして、客に「立て」といったということ。
- このことがあってから、わたくしは、どこに行っても、レストランに入ったならば、まず、入口で、「May I enter ?」と聞くことにした。それで「どうぞ」と言われたならば、「Haven't you any seat for us ?」と聞く。もし、このとき「All right!
free !」と言われたならば、自分で席を探す。こういうことにした。
- で、さらに、わかってみると、欧米人ならば、みんな、こういう順序を踏んでいるということ。
- ハワイでも、あるレストランの入口で、こういったところ、はなはだ、喜ばれた。というのは、なんと、そこに入ってくる日本人客のあらかたが、勝手に席をとっていたからである。
【型7】席替えは不作法でない
マネジャー、ヘッド・ウェーターに案内された席であろうと、イスを引かれても、こちらが座る以前であれば「もう少し、あちらのほうにしてほしい」と申して、少しも、不作法で
ない。