第7章 飲食・喫煙 ◆第5節 テーブル・マナー総説
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第5節 テーブル・マナー総説


【通解】

レストラン……独立でやっているレストランのほか、ホテルの中にあるメーン・ダイ ニング以下の食堂を含む。

【通解】はじめ、楽しくないテーブル・マナー
  1. 楽器で、楽しく、美しく、演奏するためには、その楽器を、正規の鳴らし方で鳴らさなければならない。
    で、その正規の鳴らし方を身に付けるまで、楽器を習うことは、楽しいどころか苦しい。
  2. スキーで、楽しく、美しく、滑るためにも、正規の滑り方を、苦しんで、習わなければならない。
  3. テーブル・マナーも同じことである。
    テーブル・マナーの目的が、食事を、楽しく、おいしくすることにあるのは、そのとおり。
    が、テーブル・マナーが無意識に身に付いたとき、食事が、そうなるので、テーブル・マナーを、楽しく、覚え込もうというのは、間違いである。
  4. 「テーブル・マナーを気にして、食事をしても、楽しくないし、おいしくないから、テーブル・マナーを簡素化しよう」というのは、「楽器の奏法を気にして、演奏しても、 楽しくないから、簡素化した奏法にしよう」と言っているのと同じで、そんなことをす れば、楽しい音楽は、生まれない。
  5. テーブル・マナーは、給仕を受けながら、そうして、他の人を不快なものにしないようにするために、あるといえる。
    ひとりで作って、ひとりで食べるためのものでない。
【通解】東洋人には不自然なテーブル・マナー
  1. 洋食は本来、欧米のものであるから、欧米人の身体つき、生活習慣に合っている。
    東洋人が自然にふるまってみて、形をなさないところは、いくばく不自然に振る舞わなければ ならない。それも、一見、自然風にするのであるが。
    それだけ、東洋人の洋食には、欧米人より不自然さを加えなければならない。
    (例 大声を出さない。スープを飲むときの口つき)
  2. 欧米社会の体質は、東洋社会の体質より、まだ、こなれていなく、しかして、宗教的習慣は、すみずみまで、いまだ、色濃い。で、食事を、なにか、宗教的儀式と考えてい るフシがある。 で、洋食には、いくばく、「窮屈さ」や「芝居気」を、楽しんでいる性格が強い。 これが、テーブル・マナーの性格。
【通解】1遍(いっぺん)はやっておけ
  1. ここに書くことは、第1章総論に書くべきことであったかも知れない。
  2. で、ものごとを、身に付けるというとき、本で読んで、「ああそうか」と思うだけで、もう身に付いてしまうこともある。
  3. そうかと思うと、1遍は、実地にやって見ておかなければ、ダメであって、その1遍をやっておけば、もう、それでよいものもあるということ。
  4. そうかと思うと、10遍とか30遍とかやっておかないと、手が決まってこないものもある。
  5. また、その上は、100遍、300遍、1千遍、3千遍といったランクを見い出すように思う。
  6. 1つのことを、一応なりとも身に付けようと思うとき、「これは、おそらく、何遍ものであろう」という見当を付けるのがよい。それなりに、生活予定を立てられる。
  7. で、ここのテーブル・マナーなのであるが、「読めばもの」(1度、読んでわかっておけばよいもの)と、ともに、「1遍もの」(1遍は、実地にやっておく必要のあるもの)が、はなはだ、多いということ。
  8. たとえば、である。「口に入れてみて、においのおかしい食べ物は、フォークの上に吐き出し、皿の手前の部分に置きなさい」といった条項は、「読めばもの」でなく、「1遍もの」である。実地に、1遍は、やってみておかないと、改まった席で、本当に、腐っ たものを食べたとき、あわてて、珍芸をやってしまうことになる。日本を1歩出れば、世界的に有名なレストランでさえ、ときどき、腐ったものを食卓に出している。
【通解】テーブル・マナーの4大ポイント
  1. 音に注意
    シルバーの音を、まったく、させるな。
    大声を出すな(ことに、日本人は、酔ってくると、話し声、笑い声が大きくなる)。
  2. 姿勢に注意
    どのようなときも、姿勢を崩すな。
  3. 几帳面さに注意
    不器用でよいから、几帳面に行なうこと。
  4. 話せ
    黙って、食べるのを、不作法と見る。 ことに、ほめよ。
【通解】女子優先への考え方
  1. 東洋古来の方式に従えば、男子が先、女子があとである。西洋も、1400年代ぐら いまで、男子が先であり、その後、女子を先にするように改まった。
  2. しかし、不安な環境で、女子を保護するためには、男子を先にするほうがよい。
  3. また、安全な環境で、とかくに、暴威を振るいそうな男子を押さえるには、女子を先にするのがよい。
  4. こん後、世界作法を考えていくとすれば、いずれがよいか。わたくしは、男子が横暴でないならば、男子を先にするのが、無理が少ないと見る。
  5. で、さしあたり、それが、東洋の中であろうと、西洋式で行なうべき場では、女子を先にし、西洋の中であろうと、東洋式で行なうべき場では、男子を先にすることであると思う。
  6. このとき、環境と服装とでは、環境を優先して考えるべきであろう。たとえば、日本人夫妻が、ともに、洋服を着ていても、その場が、純日本式の場であれば、男子を先にし、夫婦とも、和服を着ておろうと、その場が、西洋式であれば、女子を、先にするといったことである。で、夫が洋服を着、妻が和服を着ているといったときも、その環境によって、考えれば、答が容易に出る。
    1. 主客がいるとき、その場所にかかわらず、主客の作法に合わせる。
    2. 主客がいないとき、建物のいかんにかかわらず、東洋人が多ければ、東洋式で行ない、西洋人が多ければ、西洋式で行なう。
【通解】女子は何才から女子か
  1. いま、女子を先にし、男子をあとにして行動すべき、西洋的環境の中にいたものとす る。
  2. が、その女子は、公式の場のとき、18才(デビューの年)以上を、自分の子であっても、女子と見る。
  3. しかし、ありふれた場での習慣は、だいたい16才(中卒)からが女子である。
  4. で、15才以下の女子は、大人(16才以上)の男子からは、男子として取り扱われる場合を生じてくる。
  5. が、15才以下の男子からは、やはり、女子として扱われる。

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