第6節 机ならべ
【通解】
- 教室の中のような机やイスの配置を「教室ならび」と呼ぼう。
- 「教室ならび」は、セミナーのときとか、多人数をあつめての、式典兼会食といったときに用いる。
- 通常は、設営者が、机やイスを設営し、客が、ただ、これを用いる。
- ところが、客が入って来たとき、机やイスが軽ければ、せまいだけに、どうしても、そのならびが、くずれてしまう。
- こんご、家具は、ますます、軽量化してゆくから、「教室ならび」の机やイスは、客が入ってくるや、ますます、ならびもくずれやすくなる。
- ここに、机・イスのならびのくずれを、客が、みんなでなおすという作法が発生している。
- アメリカの一部とヨーロッパの大部分において、わたくしは、日本と異なる、この種の作法の出来上がりを見る。
- こんなこと1つが、できていないから、われわれは、エコノミック・アニマルといわれると見る。
- 見ていると、かれらは、順次に、やって来て、一同、着席のすんだとき、無言のうちに机のならびをなおしている。
- みんなで、やっているのに、日本人が混じっていると、日本人だけは、それに気付かず、澄ましている。
そこで、日本人のいる部分だけ、なおせない。
これでは、日本人が嫌われるのも、あたりまえではないか。
【型1】机ならべ
- 2人がけ、3人がけ、4人がけの机の各机で、両端にすわった方を、「つくえマスター」と呼んでみよう。
- 最前列と最後列の「つくえマスター」を「タテ・マスター」と呼んでみよう。
- 教室の左右端の「つくえマスター」を「ヨコ・マスター」と呼んでみよう。
- 教室の最前列左端にいる「つくえマスター」を「シート・マスター」と呼んでみよう。
- シート・マスターは、机群のまわりをひとまわりしながら、机群のいちばん外がわにある机のタテとヨコの間隔をなおしていかれよ。
このとき、もし、わかれば、タテ1名分の前後巾をヒモで示していかれると、はやい。
(例 身体の入る前後巾69cm)
- 各つくえマスターは、シート・マスターによって決められた四囲の机にあわせて、タテ、ヨコをなおされよ。
- 机ならべのサインは、すべて、無言をもって、ゼスチュアを使って行なわれよ。
- その合図の仕方の参考を述べる。
- 「こちらを見よ」……
右手を高く挙げる。
相手が、このサインに気付かないとき、出かけていって、肩を、ちょっとさわり、帰ってきて、再び、このサインを行なう。
- 「その人物を、こちらに向かせてくれないか」
まず、左図の手つきをしてから、前 a を行なう。
- 「ありがとう。それでよい」
- 「あなたはいま、こちらを見ているけれども、むこうのほうで、あなたに振りむいてもらいたがっているよ」
まず、自分の耳の上あたりを、中指で、かろく、たたいたのち、ゆるくひらいた手のひらを、垂直にし、これを、垂直軸で回転させる。
- 「右(左、前、うしろ)へ」
これは誰でも、ふつうにやっている合図である。ただし、1本ゆびで合図されないこと。
【型2】机を1人で動かすな
- 長辺1m 以上ある机を動かすとき、まわりに迷わくをかけないため、1人で行なうと、かえって、作法的でないと見る。
つまり、ひとりで扱えば、どうしても、机を荒く扱うことになり、机の脚が、ゆるんでくるから。
- で、机の端に立って、待っていて、誰かが来たとき、いっしょに持って運ぶのがよい。
- ところが、イスについては、1人で持てる以上、1人で運ぶのが作法である。
これなど、机の場合と矛盾した考えのようであるが、そういう国際習慣である。
- 車付きイスの移動の仕方
車付きイスを移動させるときは、持ち上げずに、床に付けたままで、押されよ。
【型3】援助発進
- 現代日本人には、人が、目の前で、重い物を動かそうとしているのを、平然と、見ている者が多い。
さっと、手を貸すのが、紳士淑女である。
- あなたが立っておられるならば、10m 以内、助けにゆかれよ。
あなたが座っておられるならば、5m 以内、助けにゆかれよ。
- 相手の困りようによっては、さらに遠くとも、助けにゆかれよ。
- 相手と自分のあいだに助けにいってよいはずの者がいるとき、3秒間は眺めておられよ。
それらの者が、3秒以内に動き出さないならば、こちらが動かれよ。
- こちらが動き出したとき、他の者も、同じ目的で動き出すことが多い。
助け人が所要人数を超えていると判断するならば、自分は、なに気なく、戻られよ。
自分が戻ったとき、もういちど、眺めなおされよ。
なお、助け人の人数が不足と見るならば、ただちに、ふたたび、助けにゆかれよ。
- 助け人同士で、はやく到着するための競争をされるな。
人数が、多すぎるかどうかは、到着したとき、判断されればよい。
- これらの往ったり戻ったりの動作は、平然とされよ。
テレると、スマートにならない。