第3節 集団外への作法
【通解】
作法は、まず、自分の集団の外に対して、考えられよ。
ついで、集団の中のみんなに対して考えられよ。
この順序を間違えられるな。
日本では、しばしば、この逆の順で考えられてきたし、私どもの生活習慣に、それが、こびりついている。
【型1】移動集団での巾1/2の占有
- 集団が、有効巾2m以上の道路・廊下を行くとき、前方から、誰も来ないならば、有効巾いっぱいに広がって歩いてよい。
- もし、前方から人が1人でも来るのであれば、道路・廊下の有効巾の1/2までを占有されよ。このとき、左の者が、うしろに下がること。
【説明】
- この慮り(おもんばかり)が、日本人には、まったくない。
- 欧米では、小学生のときから、これにつき、厳しく躾(しつけ)られている。
【型2】タテ1列歩行
通るところの有効巾が2m未満であって、①まわりに人が座っているとき(例 卒業式、レストラン)と、②むこうから、1名以上の人が来るとき、こちらが2名以上で歩いているならば、こちらは、タテ1列となり、こちらの人対人の前後距離を3mずつとされよ。
【説明】
- 日本では一般化してないが、これは、国際習慣である。
- 前後を3m、あけることによって、前の人の「うしろ風」を保つことができ、また、途切れもしない。
- 日本の女性は、これに馴れていないので、恥ずかしくなり、3mを切り詰めやすい。
- 廊下などを大勢で歩くとき、2〜3名の小集団を作り、その小集団相互の間隔を約3mとされよ(たとえば、ホテル見学における廊下などの歩行の場合である)。
【型3】移動集団の一時停止
- まわりに人のいる中を、こちらが1列縦隊、前後3m距離で歩いていったとき、前が一時停止したならば、こちらも3mあけたまま、一時停止されよ。
- この停止のとき、また、動き出すときには、静かにし、まわりの空気を、かき立てないようにされよ。
【説明】
これは、この集団のそとの人に対して、こちらが、刺激を与えないようにするためである。
【型4】移動軟集団が集結のため停止したとき
- 移動してきた軟集団が停止したとき、いちど、互いの肩と肩とが付かんばかりにして、集団塊を小さくされよ。
100名の人たちは、直径5mの円の中に入れ。
50名の人たちは、直径4mの円の中に入れ。
25名の人たちは、直径3mの円の中に入れ。
10名の人たちは、直径2mの円の中に入れ。
5名の人たちは、直径1mの円の中に入れ。
- それから、集団のまわりを見て、さしつかえない程度に、ひろがられよ。
- これらのことは、バラバラの個人が、軟集団として、集結したときも同じである。
【型5】立集団として、だいたい、1/nのスペースを占有されよ。
- こちらが集団でいるとき、他の集団が、そこに入って来たならば、スペースの1/2をその集団のために割譲されよ。
- さらに、もう1つの集団が入って来たならば、こちらは、スペースの1/3に小さくなられよ。
- ただし、以上は、各集団の人員が同数のときの話であるから、各集団の人員の異なるときは、それなりに、頭で計算されよ。
【説明】
- 大教会のドームのまん中に、日本人観光団が、立っていたものとする。
日本人は、互いに、ぶつかりあわないように、1人1人のあいだを1m あけて、立っている。
で、その団体の全体の輪が、直径10m ぐらいになっていたとする。
ドームの直径が、20m はあるから、まだ、ゆっくりとあいている。
そこに、欧米人の別の団体が入って来る。
日本人たちは、けっして、自分たちの輪を小さくしようとか、ドームの中の片側をあけてやろうとか、しない。
で、その欧米人たちの「わるい対日感情」を煽ることになる。
- つぎに、日本人団体が、別のドームに入っていったものとする。
と、欧米人団体が、直径10m でいたのを、たちまち、やめて、肩と肩が、くっつきあわんばかりに、小さな輪になってくれる。
それが、そこの幹事の指示によるのでなく、ひとりでに、そうなる。
このとき、日本人の誰彼が、ちょっと、手を振って、「Thank you」と言えばよいものを、「空いてる、空いてる」とばかり、空けてもらったスペースに広がり、空けてくれた連中を対立的な眼で見る。
で、また、「わるい対日感情」を煽る。
- 「日本人集団には、上から号令をかけて、対外問題を調整する者がいないと、ダメ」と、よく、言われること。これでは、国際的に孤立する。
【型6】通路をあげて立たれよ
- こちらが、軟立集団でいるとき、不特定多数者のための、通路とすべきスペースの上に、わだかまってしまっていることを見いだしたならば、そこを、あけるため、こちらの集団の形を変形されよ。
- 変形のためには、こちらの集団の全体を一方に寄せることでもよく、こちらの集団のまん中に、通路を造り出すことでもよい。
【型7】集団を分割することを知られよ
- こちらの集団の全員が、いっペんに入ると、誰かに迷惑をかけるときは、こちらの集団を分割して、第1回、第2回……というふうにして、入られよ。
- これは、たとえば、エレベータに乗るとき。
- また、せまい廊下をとおり抜けるとき。
- また、ワイン・セラーを見学するとき。一時に9名以上、入ると、ワイン・セラーの温度が上がって、ワインの貯蔵のためによくないとされる。で、同時に、8名までとされよ。
【型8】自分のテーブルの人たちよりも、他のテーブルの人たちのことを考えられよ。
食卓での話し声や、笑い声の大きさは、まわりを考えて、調節されよ。
【説明】
1つのテーブルに、欧米人と日本人とが、数名で座っている。このテーブルでは、おおいに談笑されている。
日本人は、そのテーブルでの欧米人と、よく、融けあって、いっしょに談笑している。
が、その日本人は、そのテーブルでの「つきあい」に熱心なあまり、声高となり、まわりのテーブルの存在を忘れてしまう。
ここにも、「大群の中で果たす小群の作法を第1に考える」という基本が忘れられている。
セビロを着て、優秀なトランジスタとカメラと船と自動車をつくるアニマルは、自分が、世界の中に活きていることを知らないから、危険であり、その動き方によっては、もういちど、たたきつぶさなければならないという見方まで、されることになる。
【型9】集団の対外関係をよくするには、自分と隣人から
- 自分の集団の対外作法をよくするためには、集団員の1名1名が、対外作法に心掛けなければならない。
- が、それを心掛けても、この集団内の誰もが、そのようなことに気付いていないかも知れない。
- そのとき、集団内のみんなに注意を与える係がいれば、その人に、自分の意思を伝えられよ。
- が、その係がいないか、その係としての働きをなさない状態にあると見るとき、まず、自分が、となりの人たちに、働きかけられよ。
- そうして、働きかけても、誰も、承認しないならば、自分だけ、作法を守ろうとされよ。