第1章 論文の書き方
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第51節 構文


  1. 文法上、誤りのある文を書かれるな。(△2)

    (悪い例)
    これからのレストラン創業についての重要な問題は、
               主   格
    乱立するレストランのなかにおいて、
          空   格
    いかに、自己の店を売り出してゆくか、
          目 的 格
    が経営の中心をなすので
          ?
    ある。
    述格

  2. 口頭では、文法を無視した表現をしても、多く相手に通じる。
    これが、「書いた文」となると、ダメである。
    この点、新聞の社説も手本にならない。(△2)
    (悪い例)
    商品価格とは、要するに、消費志向と原価構成である
    商品価格とは、要するに、消費志向と原価構成で

  3. 実務論文のなかでは、あまりに長ったらしい文を、極力、避けられよ。
    文法や論理が正しくとも、忙しい人に、速読できない。(△2)

    (悪い例)
    それは、わが国が、南北に長く位置し、したがって、気候風土の変化が激しく、動物にも植物にも、亜熱帯から亜寒帯近くに及ぶ、さまざまのものが見るのに充分であるからである。

    (悪い例)
    これらの地域は、こんご、たんに、買物のできるといった機能面だけでなく、無目的に、都市生活者が、自分を解放できるスペースという役割りを持たなければならない。

  4. 「論理因子」

    When
    いつ
    時格 ある夏の午前 1985年頃
    Where
    どこで
    空格 船の甲板で 日本で
    for what
    なんのために
    指向格 結婚を申し込むために 国際親善のために
    as what
    なにとして
    立場格 愛のしるしとして キャンペーンとして
    who(what)
    なには
    主格 かれは 全観光産業が
    whom(to which)
    なにに
    客格 かの女に 全外客に対し
    what
    なにを
    目的格 小箱を 半額サービスを
    how
    どうする
    述格 手渡した 断行するであろうか

    これだけの論理因子の区別を、はっきりさせて、1文1文を書いてゆけば、ひとりでに、日本語となるし、それぞれの国のことばで語るときも、まったく、同じである(「仮定文」「疑問文」という要素が加わっても同じ)。

  5. ただ、まぎらわしいものがあるのは、これらの各因子に、形容詞や、形容句や、副詞や、副詞句が付いたときである。
    主格……なには…… を、はっきりさせて書いてゆけば、まよわされない。

  6. 日本語を含むいくつかの国語には、助詞(てにをは)がついているので、1文の中での単語の語順をかえても、意味が通じる。

    船の看板で、小箱を、かれは、ある夏の午前、結婚を申込むために、かの女に、愛のしるしとして、手渡した。

    あえぎあえぎいっているような文とはなるが、これでも、意味は、正確に、伝わる。
    「手渡した」をさいごにしないと、詩文となるが。
    助詞は、ありがたいものであり、そのかわり、これを、正確に使わないと、完全に、全体がアウトとなる。

  7. かの女 耳 根もとまで 赤くし こう いった。
    あたしでも いいの?

    「耳を根もとまで赤くして」は、副詞句であって、「いった」を修飾している。
    「あたしでも」の「でも」は、立場格の1つの形。

      いま
      ここで
      しあわせを得るために
    あたしでも
      あなたは
      自分に
      自信を持つことについて
    いいの?

  8. 格ごとの助詞

    時格 に(は)  で(は)
    空格 に(は)  で(は)
    指向格 ため(に)
    立場格 して  で(は) で(も)
    主格 は  が
    客格 に(と)  へ(と)
    目的格 を(ば)
    述格 ……

  9. 主格、客格、目的格は要するに「体」である。

  10. 「体」の種類は、つねに、ヒト、モノのみである。
    しかし、このモノは、いくらでも、こまかく分けられる。
    体の種類

  11. 観光産業を考えるときは、さらに、こまかく割ってゆかなければならない。
    体の種類

  12. 前項の  あたりになってくると、かなり、観光産業で考える因子が具体化してきている。

  13. 主格での「」と「」の区別
    「が」は、副主格であって、その文のなかに、正主格が別にあるか、別文でも、近いところに、正主格があるとき、正主格との混同をおこさないためにのみ、使う。

    かれ、わたくし 書き始めると同時に出ていった。
    わたくし、ゆっくり、書いていたとき、かれ、あたふたと、はいってきた。
    わたくしのそばに坐るや、かれ小声で、こういった。
    「オイ。すぐ、出発だ。ヤバイ」

  14. 主格での「」は、1文の中で、1回のみ使われよ。(△2)
    1文中に「」を1回しか使ってならないということは、書き手に、はなはだ、不自然さを感じさせるものである。
    しかし、読み手にとっては、主語がはっきりして、論旨が明解となる。
    1文中に「」を2回以上使わなければならないような文になったとき、表現の方法を変えて、「」を2回以上使わなくても、意味がよく通る文を工夫されよ。
    また、「ホテルは、旅館ではない」というような文では、「ホテルは、旅館でない」と、平気であとのほうの「」を取ってしまってよい。

  15. ただし、「AはB、CはDであって」といった文のときは、別である。

    「日本で、ごはん、口に、頬張って、おいしいと思う」

    これは、わざと「」を重ねて、1つの効果を求めている。
    こういうときも別としよう。

  16. 「では」「へは」「には」「としては」「あっては」等の「」は、主格の「」とぶつかりあって、文を読みづらいものとするので、極力、なくされよ。
     (Same Sound Surrender……至近同音反復)(△2)

  17. 1文の中で、「」を2回以上、用いるとき、とくに、ある効果を求めるのでないかぎり、「」と「」のあいだを、10文字以上、あけられよ。(△2)

  18. 客格での「」と「」の区別  標準は、つねに「」であって、客格に、大きさ、つよさ、尊敬をあらわしたいときにのみ、「」を用いる。

  19. 本講での提出論文のように短い論文では、つとめて、箇条書きを、おおく、用いられよ。

  20. 1文のなかに、箇条書きをいれるとき、つとめて、 ① ② といった番号を入れられよ。

  21. ただし、第①、第② といった書きかたをされないように。(△2)

  22. この ① ② 等の前後は、各1コマあけられよ。(△2)
    (例)
    空白コマ

  23. このような、文中箇条書きを行なったあと、「」の文字を入れるときは、その前を、1コマあげられよ。(△2)

  24. 文中箇条書きでなく、名詞や名詞句を列記したのちに、「」の文字を入れるときは、等の文字の前を空けられるな。(△2)
    (例)
    しじみ、かき、はまぐり、あわび、さざえ等の貝類を……
    しじみ、かき、はまぐり、あわび、さざえ↑
    しじみ、かき、はまぐり、あわび、さ空けない

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